「何かしてくれそうだな」という期待感。試合後の会見で印象的なやり取り。鎌田大地は今後もパレスを動かしていくだろう【現地発】

2025年10月26日 田嶋コウスケ

改めて欠かせない存在であることを証明

パレスの重要戦力として奮闘する鎌田。(C)Getty Images

 クリスタル・パレスのMF鎌田大地が躍動している。

 国内リーグの2節まで怪我で欠場したが、3節アストン・ビラ戦以降は6試合連続で先発。10月18日に行なわれたボーンマスとのプレミアリーグ8節でも、3-4-2-1の左セントラルMFとしてスタメン入りし、攻守に奮闘した。

 攻撃では、スルーパスで好機を演出した。45+1分には、切り返しから左サイドにスルーパスを通して場内を沸かせた。そして64分には、ペナルティエリア内に走り込んだダニエル・ムニョスに浮き球のスルーパスを通し、ジャン=フィリップ・マテタのゴールの起点となった。攻撃のスイッチを入れたい場面ではスルーパスを入れ、流れを落ち着かせたいシーンでは味方の足もとに丁寧にパスをつなげていた。

 一方、守備でも力強いボール奪取からマイボールにし、場内から拍手が起こる場面もあった。9月のクラブ月間最優秀選手賞を受賞したことを裏付けるかのように、鎌田は改めて今のパレスに欠かせない存在であることを証明した。

 その5日後に行なわれたカンフェレンスリーグのAEKラルナカ戦で、鎌田はローテーションによりベンチスタートにまわった。0-1で迎えた71分、日本代表MFは途中交代で出場。4-2-3-1の左MFに入り、クロスに飛び込んで惜しいシーンも作り出した。しかし反撃及ばず、チームは0-1で敗戦。格下相手に終始押し込んでいたが、パレスはホームで白星を挙げられなかった。
 
 試合後、鎌田は反省の言葉を口にした。

「うーん...負けるような試合でなかったのは間違いないです。ただ、今日のように引かれた相手に対し、自分たちはやっぱり崩していくのが難しい。そんな風に(ピッチの外から)見ていて思いました」

 振り返ると、加入1年目の昨シーズン序盤戦と比べると、鎌田に対するパレスサポーターのリアクションは大きく様変わりした。

 ボーンマス戦ではその傾向が顕著だった。鎌田がボールを持つたびに「何かしてくれそうだな」という期待感がスタンドからひしひしと伝わってくる。視野の広さに裏打ちされた鋭いスルーパスを通すと、サポーターから大きな歓声が起こり、的確な状況判断に基づいた安全なパスにも「それでいい」と拍手が響き渡った。チームの好調も追い風となり、鎌田の信頼度は飛躍的に高まった印象だ。

 対照的に、昨シーズンは難しい時期を経験した。新戦力の日本代表MFには、サポーターから「さて、どれほどできるか?」といった懐疑的な眼差しが向けられていたように思う。そして鎌田自身も「なかなか難しかった」と認めていたように、パレスとプレミアリーグのサッカーへの適応に時間がかかった。一つひとつの判断が遅れ、ボールを奪われてピンチを招いた試合もあった。

 ところが適応が完了した昨シーズンの後半戦から、プレーレベルはどんどん高まっていった。その成果が今年9月のクラブ月間MVPであり、今季リーグ戦での連続先発出場、さらにはサポーターの力強い声援なのである。
 

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