[本田泰人の眼]ブラジルに歴史的な初勝利。選手は大喜びしていたが、少し浮かれすぎではないか。前半の2失点にもっと注目すべきだ

2025年10月16日 本田泰人

何点取られるのか。試合前から不安は募ったが…

日本はブラジルに歴史的な初勝利。試合後、選手たちは歓喜していたが…。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 日本代表は10月14日、ブラジル代表にホームで3-2と見事勝利した。

 試合前日、サッカー評論家のセルジオ越後さんとイベントでご一緒させていただいた。休憩中に話題になったのは、もちろん翌日のブラジル戦についてだ。

 過去の対戦戦績は0勝2分11敗。13試合戦って一度も勝ったことがない。しかも、ブラジルは4日前の韓国戦で5-0と圧勝していた。

 怪我人などにより選手の入れ替えや調子の波があったとしても、腐ってもブラジルだ。対して、破壊力のある攻撃陣を迎え撃つ日本の3バックは、決して主力が揃っているとは言えないメンバー。何点取られるのか……試合前から不安が募るばかりだった。

 日本戦はどんな試合になるのか。単刀直入に、セルジオ越後さんに聞いたところ、意外な答えが返ってきた。

「今のブラジルは史上最弱。良い選手がいない。日本のディフェンス陣は怪我人が多くてやばいけど、ブラジルはもっとやばい。勝てるとしたら、明日が絶好のチャンスだよ」

 ブラジルに対してネガティブな言葉が続いたのだが、その言葉どおり、日本がブラジルから歴史的な初勝利を手にしたのは驚きだ。

 もっとも、前半を0-2で終えた時は、まさか45分後に3-2のスコアになるとは想像していなかった。

 セルジオ越後さんの予言は外されたか…。そんな気分にさせられた。

 韓国戦から先発8人を変更しても、前半のブラジルは圧倒的にボールを支配。日本が最終ラインに5人を並べて守っても、その隙を突いてきた。しかも、セットプレーの飛び道具ではなく、流れるようなコンビネーションプレーから26分、32分と立て続けにゴールを奪ってみせたのだ。

 あと何点取られるのだろう。そんな不安が脳裏をよぎったが、良く言えばあの流れから前半を2点で抑えられたのは大きかった。
 
 サッカーの世界では、2点はセーフティリードではない。次のゴールをどちらが取るかがポイントだと思っていた。

 後半、引いて守った前半とは一転、日本は前線からプレスをかけて勝負に出た。そこでブラジルの最終ラインの不安定さが露呈。52分、キャプテンマークを巻いた南野拓実が前線から激しくボールを追い、行き場をなくした相手CBのミスを誘ってパスをカットし、「次の点」を日本が手に入れた。

 これが勝負の分かれ目となったわけだが、すべてはブラジルで14番を背負うCBファブリシオ・ブルーノのミスから、日本の大逆転劇は始まった。

 ブラジルの最終ラインは酷すぎだ。日本のハイプレスが良かったとはいえ、まさかセレソンが相手選手にプレゼントパスを出すなんて。油断、集中力の欠如、判断ミスが重なった完全なる失態だ。

 ファブリシオ・ブルーノは2失点目にも関与。中村敬斗が放ったボレーシュートをクリアし切れず、同点ゴールを与えた。失点させまいと懸命にプレーした結果なのであまり責めたくないが、ミリトン、マガリャンイスと比べても安定感を欠いていたのは否めない。

 MVP(Most Valuable Player)とは反対のMWP(Most Worthless Player)があるならば、間違いなくファブリシオ・ブルーノが受賞するだろう。

 相手GKも酷かった。この日が代表デビュー戦だったが、71分に伊東純也のCKから上田綺世の放ったヘディングシュートは、GKの正面だったにもかかわらず防ぎきれなかった。しかも、飛び出さなかった判断もミスと言わざるを得ない。

 セレソンレベルでもミスはつきものだが、彼らはコアメンバーではないため、W杯本番ではこのようなミスは起きないだろう。しかし、2-3の逆転劇の背景には、こういうラッキーなゴールがあったことも見逃せない。

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