「チャイナ・ミラン誕生」の報道に警報。取引完了まで予断を許さない…

2016年08月06日 片野道郎

伝えられていた投資家たちとは異なるグループと仮契約。

ミラン買収に動いている中国グループの代表者のひとりハン・リー(右)。ベルルスコーニ(左)は仮契約を結んだが、はたして身売りは完了するのか。

 8月5日、ACミランの親会社であり、シルビオ・ベルルスコーニ名誉会長傘下の中核企業である投資会社『フィニンベスト』が、ミランの発行済株式の99.93%売却について、中国の投資企業『シノ-ヨーロッパ・スポーツ・インベストメント・マネジメント・シェンシン』と合意に達し、2016年末までに株式譲渡手続を完了させる旨の仮契約を交わしたとするニュースリリースを発表した。
 
 昨年春に持ち上がったタイ人投資家のミスターBことビー・タエチャウボルとの売却交渉が事実上立ち消えになった後、ベルルスコーニとフィニンベストが中国の投資家グループと新たな売却交渉を続けていたことは周知の通り。しかし意外なことに、今回発表された売却先は、以前の交渉相手とは異なる別のグループだった。
 
 これまで交渉を続けてきたとされる投資家グループは、アメリカに拠点を置くイタリア系アメリカ人の投資コンサルタントであるサル・ガラティオートを仲介人としており、国営茅台酒メーカーの『貴州茅台集団』、大手検索エンジン『百度』、そして中国スーパーリーグ王者の広州恒大を保有する『恒大興産グループ』といった中国を代表する巨大資本が参加しているという触れ込みだった。
 
 買収が成立した暁には、ガラティオートのビジネスパートナーであるイタリア系イギリス人のニコラス・ガンチコフ(2人ともスポーツビジネスを専門としているエキスパート)が、ミランの経営トップに就任するとされていた。
 
 しかし、6月末に彼らと発行済株式の80%買収で合意に達したというニュースが流れたにもかかわらず、その後は正式な発表がされないまま1か月以上が経過。ところが8月5日付の『ガゼッタ・デッロ・スポルト』が、一面トップで「大物代理人ジョルジュ・メンデスと深い繋がりを持つ復星グループがミラン買収に」というスクープを打つ。フィニンベストはこれを即座に否定し、同日夜にシノ-ヨーロッパとの合意を正式に発表することになった。
 

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