同じ轍を踏まないために。求められるパリ世代の底上げ。チーム最年少の21歳は目を輝かせる「年齢は関係ない。違いを見せないと」【日本代表】

2025年09月04日 元川悦子

ドイツ大会とブラジル大会では悔しい結果に

複数のポジションをハイレベルにこなす佐野航。兄・海舟との共演もあるか。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/現地特派)

 2試合が組まれた日本代表のアメリカ遠征。その初戦となる9月6日のメキシコ戦が徐々に近づいてきた。現地での活動が3日目となる3日のトレーニングでは、冒頭15分以外、非公開。報道陣をシャットアウトして、27人全員で戦術確認などを行なったと見られる。

 7月のゴールドカップで優勝したメキシコの方が、2戦目で対戦するアメリカより格上と目されることもあり、日本としてはベストメンバーを送り出す公算が大。GKは鈴木彩艶(パルマ)、3バックは板倉滉(アヤックス)、渡辺剛(フェイエノールト)、瀬古歩夢(ル・アーブル)、右ウイングバックが堂安律(フランクフルト)、左には三笘薫(ブライトン)か前田大然(セルティック)、ボランチに遠藤航(リバプール)、佐野海舟(マインツ)、2シャドーに南野拓実(モナコ)と鎌田大地(クリスタル・パレス)、1トップに上田綺世(フェイエノールト)という形が有力だ。

 こうなると、鈴木彩以外のパリ五輪世代はいずれもベンチスタートということになるが、久保建英(レアル・ソシエダ)はもちろんのこと、鈴木唯人(フライブルク)や細谷真大(柏)はメキシコ戦の途中から出場する可能性が少なからずある。藤田譲瑠チマ(ザンクトパウリ)、佐野航大(NEC)はボランチの交代要員と位置づけられるかもしれない。

 また、移動と時差を伴う中2日のアメリカ戦では、藤田と関根大輝(スタッド・ドゥ・ランス)、望月ヘンリー海輝(町田)のスタメン抜擢が濃厚だ。

「フランス2部でやっていて、代表に選ばれるのが難しいのは自分も理解している。今回、チャンスをもらえましたけど、厳しい状況は変わっていない。自分は今、アピールするしかないので、ラストチャンスというか、この遠征が勝負だと思っています」
 
 関根が悲壮な覚悟を口にした通り、彼ら若手が残り9か月で既存メンバーを追い越し、W杯メンバーを射止めようと思うなら、目に見える足跡を残すしかないのだ。

 森保一監督が常連組の鈴木彩と久保を含めて、8人のパリ世代を選出したのも「若い世代の底上げ」を強く求めているからに他ならない。W杯で主要メンバーが2大会連続で不動だと、後者の大会で頭打ちになってしまうのは、過去の歴史が証明しているからだ。

 失敗例と言えるのが、2006年のドイツ大会、2014年のブラジル大会だろう。前者の時は中田英寿や宮本恒靖らが円熟期を迎えるタイミング。大きな期待を寄せられたが、まさかのグループステージ最下位に終わっている。後者にしても、2010年の南アフリカ大会でブレイクした本田圭佑、長友佑都、川島永嗣らが欧州で数々の修羅場をくぐって個の力をつけており、"史上最強"の呼び声も高かったが、結果的にはグループステージで1分け2敗。1勝もできないまま敗れ去ったのだ。
 

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