なぜビッグクラブ移籍は中々実現しないのか。日本人選手の評価が高まっているのは間違いない。本当に世界一を念頭に入れるなら…

2025年09月04日 加部 究

特にメディアを賑わせたのが三笘薫と久保建英

ステップアップが盛んに報じられながら、結局は残留した三笘と久保(右)。(C)Getty Images

 新シーズンへ向けて、欧州でプレー中の日本人選手たちは、ビッグクラブへの移籍を実現できなかった。特にメディアを賑わせたのが三笘薫と久保建英。そういう意味では、欧州制覇を目指すクラブが狙うに相応しい実力を備えつつあるのは事実だが、反面、日本代表選手たちにとってトップ・オブ・トップでのレギュラー奪取は1つの壁になっている。

 現状で三笘や久保にとって、次のステップアップは大きなチャレンジになる。特にサイドアタッカーを初めとする2列目には、各クラブともに錚々たる顔ぶれを揃えている。

 例えば、2人が揃って移籍候補に挙がったバイエルンなら、右サイドではマイケル・オリーセが不可欠のエースの地位を確立し、トップ下も故障がちだったがジャマル・ムシアラが君臨。もう1枠をドイツ代表のリロイ・ザネやセルジュ・ニャブリ、さらにはフランス代表のキングスレー・コマンらが競い合う状況だった。

 結局、ここでポジションを確保するのが難しくなったザネとコマンは、それぞれガラタサライとアル・ナスルに移籍。バイエルン、あるいは同等のトップクラブも、三笘や久保を獲得してもレギュラーで活躍する確信が持てないから見送ったはずだ。
 
 獲得にギャンブル色が濃ければ濃いほど、伸びしろの多い方に賭けるのは鉄則なので、同じ実力なら年齢が重要なポイントになる。28歳で今がピークと見なされる三笘は、リーグ得点王レベルの活躍がなければ、現実的なステップアップは難しい。むしろ中東の金満クラブが照準を定める対象へと近付いている。
 
 また、24歳の久保も、現所属のレアル・ソシエダからステップアップを図るには絶好のタイミングだった。スペイン国内ならバルセロナ、レアル・マドリーの2強は難しくても、アトレティコ・マドリーでアントワーヌ・グリーズマンの後釜なら適任と言えたかもしれない。

 だが、ソシエダでの久保は、右サイドが主戦場として定着してしまった。純粋にウインガーとして比較すれば、頂点を目指すようなチームには久保以上のタレントが少なくない。もう少し2列目を自在に動き、チャンスを創造していく長所を見せられれば、可能性は広がっていたかもしれない。

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