セリエA名門を相手に威風堂々。筑波大の浦和内定GKは「海外のトップの基準を知れた」と貴重な経験。「一番の驚きは…」

2025年08月22日 安藤隆人

完全に読み切り、右手一本でストップ

イタリア遠征で貴重な経験を積んだ佐藤。フィオレンティーナ戦では好セーブを連発し、勝利に貢献した。写真:安藤隆人

 ヴィオラ(イタリア語で紫)の愛称で有名なイタリア・セリエAの名門フィオレンティーナ。リーグ開幕を直前に控えた最終調整の意味合いもあった全日本大学選抜との親善試合で、日本の190センチの守護神が大きく立ちはだかった。

 筑波大学4年生のGK佐藤瑠星は、そのサイズを活かしたハイボール処理やセービングが光るGKだが、一番の魅力はスムーズなステップワークと、両足で同じ強度の踏み切りやグリップの利いたジャンプができる身体操作と身体能力の高さにある。

 すでに来季からの浦和レッズ入りが内定している佐藤は、ヴィオラの前に威風堂々のプレーを見せた。

「(イタリア遠征で)最初にジェノアと戦った時に、相手の身体の強さ、シュートの迫力、思わぬところから足が伸びてきくるし、サイドにはめちゃくちゃ足の速い選手がいて、全体的に攻撃に転じると全員がものすごいエネルギーを使ってくると思いました。その後にチェゼーナとの試合に90分間出させてもらったのもあって、フィオレンティーナ戦はいつも通りのメンタルで臨むことができました」

 15分に右からの折り返しから先制点を浴びたが、そこで佐藤は崩れなかった。24分にはロングボール一発で抜け出したFWモイーズ・キーンのミドルシュートをバックステップからガッチリとキャッチしてみせる。

 33分に常藤奏(中央大)の得点で同点とし、迎えた46分には、スルーパスに抜け出したドドの狙いすましたシュートを完全に読み切り、右手一本でストップした。
 
 51分には右サイドを突破したドドのクロスから、中央でキーンにフリーで飛び込まれたが、彼の頭に触れる直前で佐藤の右手がボールをかき出した。飛び込む勇気はもちろんのこと、判断のスピード、爆発的な初速、強靭な踏み切りからの大ジャンプ、そしてライナーのクロスの軌道に正確に手を差し込む空間把握能力。あらゆるスキルが凝縮されたビッグセーブだった。

 これだけに止まらない。59分にはエディン・ジェコの右からのクロスから、中央でキーンがドンピシャのタイミングで頭で合わせる。ゴール右隅にバウンドして向かっていたボールを、佐藤は左手で華麗に弾き出した。

 このセーブには佐藤も大きくガッツポーズ。全日本大学選抜の驚異の粘りに、スタジアムの雰囲気は異様なものとなっていった。70分にもジェコのヘディングシュートを横っ飛びでキャッチ。目の前にはキーンが詰めており、もしこぼしていたら失点していたかもしれない。

 そして81分には筑波大のチームメイトであるDF池谷銀姿郎が待望の逆転弾を叩き込む。2-1。日本が大金星を掴み取った。

「今回の遠征は最初、相手のチームはそこまでモチベーションは高くないのかなと思っていたのが正直なところでした。でも、どのチームも、かなり仕上がってきているというか、モチベーションが高い状態で臨んできたので、本当に嬉しかった。僕として1つ海外のトップの基準を知れたことは大きかったです」
 

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