失意の2回戦敗退。先輩たちが教えてくれたリバウンドメンタリティを思い出して。前橋育英が挽回の夏を駆け抜ける

2025年08月12日 安藤隆人

「この夏でもう一度、足もとを固めていきたい」

このままでは終われない。プレミア後期、冬の選手権に向けて前橋育英が再起を期す。写真:安藤隆人

 昨年度の選手権王者であり、そのメンバーが多く残っていることに加え、プレミアリーグEASTで前期4位という結果から、インターハイでは優勝候補に挙げられていた前橋育英。だが、彼らのインターハイは2回戦で幕を閉じた。

 高知中央戦、前半にCKからCB市川劉星のヘッドで先制し、後半も圧倒的なポゼッションで相手を押し込み、シュート10本を放った。しかし、追加点を奪えず迎えた後半アディショナルタイム1分に追いつかれる。

 高知中央のMF三井虎翔のドリブル突破に対し、キャプテンのMF竹ノ谷優駕スベディがスライディングでブロック。このプレーがファウルを取られ、PKの判定となり、三井に決められる。

 その3分後、相手のフィードに対して、焦りもあった前橋育英の守備連係が崩れた。FW井上哲太に入れ替わられ、右足シュートを叩き込まれた。悪夢のアディショナルタイムとなり、1-2の逆転負けを喫した。

 それから10日後、彼らは石川県で開催された和倉ユースサッカー大会に出場していた。

「ボールを保持できていて、試合も支配していて、先制点も奪えて...流れも良かったのに追加点が奪えずに時間が過ぎていきました。試合のクロージングをうまくやろうとし過ぎて、『何がなんでも守る』という意識が足りなかった。

 同点になってから、2-1で勝とうと自分たちが前に行き過ぎた結果、変な形で入れ替わられて、そのまま失点。最後の集中力が足りなかった。後悔しかないです」

 同点のきっかけとなるPKを与えてしまった竹ノ谷はこう振り返った。前橋に戻ってから、選手全員でミーティングを行なった。そこで彼は違和感を覚えたという。

「もっと積極的に意見が言い合えるような雰囲気にしたいと感じました。そうしないと、この敗戦は生かせないと思うので、この和倉ではみんながチームを強くするための意見交換が活発に行なえる時間にしたいと思っています」
 
 キャプテンとしてリーダーシップを発揮する竹ノ谷に対し、ディフェンスリーダーの久保遥夢も、この夏にかける思いを口にした。

「(2失点目の)市川が入れ替わった瞬間、カバーに行けなかった。連続失点という面でも、あれはディフェンスとしてはやってはいけない失点。雰囲気的にどこか緩さがあるなかで大会に入ってしまったと感じているからこそ、和倉や残りの夏の期間でもう一度、自分たちを見つめ直さないといけないと感じています」

 和倉ユースではグループCを1位で通過し、決勝トーナメント初戦も関東第一に勝利して準々決勝に駒を進めた。準々決勝ではプレミアEASTで首位を走る鹿島アントラーズユースと対戦し、1-1からのPK戦の末に敗れたが、ハイレベルな攻防戦を展開した。

「あの逆転負けで目を覚まさないといけない。今日も良い試合はできたけど、勝ちきれなかった。チームとして勝者のメンタリティを身につけていかないといけないと改めて思ったからこそ、この夏でもう一度、足もとをしっかり固めていきたいと思いました」(竹ノ谷)

「あくまで選手権は自分たちの力で優勝できたわけではありません。去年の先輩たちが残してくれたものなので、もう一度、自分たちの現在地を再確認して、和倉からリスタートを切っていきたいと思っています」(久保)

 思えば昨年はインターハイ予選の準決勝で敗退し、そこから全員が危機感を共有して冬の王者まで登り詰めた。先輩たちが教えてくれたリバウンドメンタリティを思い出し、上州のタイガー軍団はプレミア後期、選手権に向けて、この夏でその牙を全員で研ぎ澄ませる。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)

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