移籍が既定路線のはずが予測外の結末…バルサのニコ・ウィリアムス獲得失敗騒動を番記者はどう見た?「オフサイドトラップにかけられたような事態に…」【現地発】

2025年07月29日 エル・パイス紙

ラポルタ会長は「交渉は順調に進んでいる」と認めていた

ビルバオ残留を決断したニコ・ウィリアムス。(C)Getty Images

 ニコ・ウィリアムスがアスレティック・ビルバオとの契約延長を決断した。バルセロナで綴るだろう夢物語よりもアスレティックへの帰属意識が、彼の頭の中で重くのしかかった。

 バルサのファンは、ラミネ・ヤマルのアミーゴの決断に驚いた一方で、アスレティックのファンはニコの忠誠心と愛情を示した行動を称賛し、カタルーニャのメガクラブを向こうに回して刃向かう姿勢を失わなかった経営陣の勇気に拍手を送った。

 ニコを引き留めることはアスレティック、そしてホン・ウリアルテ会長にとって名誉を賭けた戦いだった。ファンはよく知っている。アスレティックの偉大さはタイトルだけでは測り切れない。その独自性は、バルサのようなクラブから狙われる主力の流出を阻止することからも育まれる。
 
 バルサの経営陣が描いた筋書きは、巧妙に練られ、広告宣伝効果も大きかったため、ニコの移籍は既定路線のように語られていた。まずニコ陣営が売り込みをかけ、後日、代理人がスポーツディレクター(SD)のデコと交渉の場を持ったことが判明した。その後、当のデコとジョアン・ラポルタ会長が「交渉は順調に進んでいる」と認めて、ハンジ・フリック監督がその言葉に同意した。

 おまけにフェラン・トーレスとダニ・オルモが選手登録を巡り、疑念を抱いていたニコを安心させるために、ラ・リーガの承認のあるなしに関わらずゴリ押しで通すラポルタ流マネジメントを説いた。筋書き通りに事は進み、後は待つだけだった。時間がすべてを解決し、晴れてニコのバルサ入りが決定するはずだった。

 しかし予想外の結末により我々はシナリオの見直しを余儀なくされた。まず何はさておき、ニコと代理人が結託してバルサをダシに使った可能性を指摘する必要があるだろう。しかしその一方で、アスレティックから受けた圧力がバルサ行きを断念させたとニコを擁護する者もいるだろう。

 深刻な財政難が足かせとなってファイナンシャル・フェアプレーと1:1のルールの遵守が困難な現状が、当初の熱狂を失望に変えた。こういった時には、ルイス・ディアス(リバプール)のような使い勝手の良い選手のほうがベターな選択肢だったと吹聴する者が現れるのが常である。
 

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