腕章を巻く同期の奮戦、首位に立つチーム、憧れの乾貴士との共闘。エスパ内定DFが噛みしめる「僕は幸せ者だと思います」

2025年07月18日 安藤隆人

第22節・柏レイソル戦でJ1デビュー

清水と大学の“二足の草鞋”で覚悟を持って邁進する日髙。写真:安藤隆人

 大津高校では選手権準優勝。法政大学に進むと、1年時から出番を得て、2年時に清水エスパルスのキャンプに参加、3年時の今年2月には清水内定を発表。特別指定選手にも認定され、6月28日のJ1第22節・柏レイソル戦では右サイドバックとしてスタメン出場を果たす。

 今季は法政大のキャプテンに就任した4年生のDF日髙華杜のキャリアを振り返ると、順風満帆に見える。だが、「キャプテンがピッチにいない現実はもどかしい」と口にするように、この半年間は葛藤も多かった。

 日髙は昨年の夏に左足ハムストリングを肉離れし、数か月の離脱を強いられた。今季もリーグ開幕前の天皇杯予選で同じ箇所を負傷し、5月途中まで離脱していた。

 5月18日の関東大学サッカーリーグ2部・第8節の順天堂大戦で復帰し、第10節の東京農業大戦でスタメン出場を果たすが、そこからは清水に合流して、J1デビューを経験してから法政大に帰還した。

 7月13日に行なわれた関東2部・第9節(延期分)の山梨学院大戦はベンチスタートで、キャプテンマークは大津の同級生でもあるCB薬師田澪が巻いた。

「今年はずっと薬師田が、ほぼすべての試合でキャプテンマークを巻いて、先頭に立って戦ってくれた。みんなも本当にチームのために力を発揮したからこそ、首位という位置にいることができている。感謝しかありませんが、やはりキャプテンとして不甲斐ない気持ちはあります」

 この試合、チームは2-1で勝利を収めて、前期を首位ターンすることができた。2点リードから1点差に詰められて、押し込まれたなかでの84分に投入された日髙は、高い守備能力を見せ、後半アディショナルタイムにはボール奪取からペナルティエリア付近までドリブルで運ぶなど、短い時間だったがインパクトを残した。
 
「いくらJ1デビューを果たせたとしても、大学サッカーで簡単に出番があるとは言えないのが現状です。キャプテンであるけど、ピッチに立てない。大学内の競争で負けているようじゃプロでは通用しないと思いますし、この状況でも大学はエスパルスに行かせてくれるし、エスパルスも受け入れてくださる。本当に双方への感謝と覚悟を持ってやりたいと思っています」

 苦しみながらも、「僕は幸せ者だと思います」と口にする。

「僕が中学の時にロシア・ワールドカップを夢中で見ていたのですが、その時のヒーローの乾貴士選手と一緒にやれている環境は当たり前じゃないなと思った。それに秋葉(忠宏)監督は僕をあのタイミングでJ1の舞台でスタメンに抜擢してくださったことは、本当に感謝しかありません。

 試合には気持ちの整理をつけて臨んだのですが、あのIAIスタジアムの雰囲気が凄まじくて、立ち上がりに硬くなってしまって、失点にも絡んでしまった。悔しさは強烈に残りましたが、それだけでなく、あのオレンジのファン、サポーターの温かくも力強い声援に背中を押してもらえた経験は、本当にかけがえのないものでした」
 

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