【総体出場校】福岡・東福岡|3連覇の鍵はアンカー鍬先の復調と一戦ごとの成長

2016年07月21日 森田将義

「大会までにチーム力を上げていかないと、大きな目標を達成するのは難しい」

昨年の選手権優勝に大きく貢献したアンカーの鍬先。プレミアリーグWESTの京都U-18戦で負傷しており、その回復がチームの動向に大きく影響しそうだ。写真:竹藤光市

「周りから『浮かれてんなよ』って思われるでしょうし、自分自身もすごく謙虚でいないといけないって思うんです」
 声の主は東福岡高の森重潤也監督だ。今年1月の選手権制覇の余韻が冷めやらない2月、新チームを結成してすぐに九州新人大会を制した指揮官に奢りは一切なかった。感じられるのは、王者の風格とともに自身を見つめる冷静な分析力。周囲に振り回されることなく、足もとを見据えながらまた新たなシーズンがスタートした。
 
 あれから5か月が経過。3連覇がかかったインターハイが迫っているが、チームに浮かれた様子は見られない。大会前の最後の公式戦となったプレミアリーグ9節の名古屋グランパスU18戦では、残り5分を切ってからの2得点で逆転勝利。6勝1分け2敗という好成績を残し、3位で前期日程を終えることになった。
 
 数字だけを見れば今年もタイトルが期待できそうな位置にはつけているが、「内容的には良い試合が少ない」とDF小田逸稀が振り返るように、チームとして満足のいく試合展開はごくわずか。指揮官も、「(インターハイまで)残りわずかな日数のなかで、チーム力を上げていかないと、大きな目標を達成するのは難しい」と危機感を口にする。
 
 謙遜から生まれる発言ではなく、今のチーム力、個々人の力を冷静に見つめているからだろう。森重監督が真っ先に指摘するのは個の力だ。
 
「プレーの精度が低い。昨年のFW餅山(大輝)、三宅(海斗)、MF橋本(和征)、中村(健人)の質は今と比べたら、もっと上だった。守備もいくら経験者がいるとはいえ、同じかそれ以下かもしれない。真面目だし、一生懸命やっているのは分かる。でも、ワガママさを改善できたから、もともと持っている力をチームに還元できた昨年に対し、今年は一人ひとりの質をもっと上げないといけないので、時間がかかる。もしかしたら、高校のうちには改善できないかもしれない」
 
 昨年からの主力にも不安はある。身体能力の高さと左サイドからの果敢な攻撃参加が売りの小田は、「プロに進むために今年はプレーしているのに、昨年と比べて良いプレーができていない。昨年は競り合いの守備と攻撃参加が評価されていたと思うのに、今年はまったく走れていない。自分でも分かっているけど、見てくれている人からも、『昨年の方が良かった』と言われる」と口にするなど、今季に入ってからはいまだパフォーマンスが思うように上がらないようだ。
 

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