インテルの「チャイナ・マネーでの爆買い」は夢物語……。パイエ獲得も空想でしかない

2016年07月19日 片野道郎

UEFAに約束した財政健全化のための収支改善計画は不変。

トヒル(左隅)からジェン・ジンドン(右から3人目)にオーナーが代わったインテル。しかし、今夏の“爆買い”は難しい。(C)Getty Images

 インテルのクラブ経営権が去る6月6日、中国の蘇寧電器グループに譲渡された。
 
 保有していた68.55%の株式を売却した前オーナーのエリック・トヒルは、当面のところは引き続き会長職に留まるものの、遠からずこのポストにも新オーナーのジェン・ジンドンが選んだ人材が送り込まれることになる見通しだ。
 
 豊富な資金力を持つ中国企業が新オーナーとなったことで、インテルが大物選手の獲得に乗り出すのではないかと期待する向きは少なくない。EURO2016でブレイクしたディミトリ・パイエ(ウェストハム)に巨費を投じるとぶち上げる一部メディアもある。
 
 しかし、結論から言えば、残念ながらこの身売りが、今夏の強化計画にプラスの影響を及ぼすことはない。
 
 というのも、インテルが2014年にUEFAに約束した財政健全化のための収支改善計画は、オーナーが変わっても有効であり、新シーズンも引き続きその制約を受けなければならないからだ。
 
 インテルの経営はマッシモ・モラッティ前会長がオーナーだった時代から慢性的な赤字体質に陥っており、13-14シーズンの決算では、ファイナンシャル・フェアプレーの基準を大きく超える1億ユーロ(約120億円)規模の損失を計上した。
 
 これを受けてUEFAは、インテルに財政収支の改善を要求。15-16シーズンは赤字をマイナス3000万ユーロ(約36億円)以内に、16-17シーズンはブレークイーブン(収支トントン)に抑えることが義務づけられた。
 
 この収支改善計画をクリアできなかった場合は、14-15シーズンのマラガや15-16シーズンのガラタサライのように、欧州カップ戦の出場資格剥奪などのペナルティーを受けることになる。
 
 伝えられるところでは、15-16シーズンの最終的な収支は、マイナス3000万ユーロというUEFAの条件をクリアできる見通しという。昨夏の移籍市場でマテオ・コバチッチ(レアル・マドリーへ)、ジェルダン・シャキリ(ストークへ)、エルナネス(ユベントスへ)などを売却し、4500万ユーロ(約54億円)のプラス収支を稼ぎ出しており、何とか帳尻を合わせた格好だ。
 
 つまり、移籍関連を除いた15-16シーズンの経営収支は、約7500万ユーロ(約90億円)のマイナスだったということを意味している。

次ページ補強はローコストの選手にターゲットを絞るしかない。

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