マドリーBチームの指揮官を退いた伝説FWラウール。一時は「すぐにでもトップチームの監督を」と求める声もあったが…【コラム】

2025年06月12日 小宮良之

今シーズンは6位でプレーオフ出場を逃す

退任が決定したラウール監督。(C)Getty Images

 レアル・マドリーのセカンドチーム、カスティージャを率いていたラウール・ゴンサレス監督が、退任することになった。6シーズンにもわたって、指揮官を務めた。トータル209試合の指揮は、歴代2位の数字だという。

 言うまでもないが、ラウールはマドリーの伝説的ストライカーだった。あらゆるタイトルを、自らのゴールでもたらしてきた。正念場に強く、ゴール数以上に貴重な場面でのゴールが多かった。自己犠牲精神も強く、献身的に戦う姿もサンティアゴ・ベルナベウのファンに愛された。

「いつか、ラウールがマドリーを率いる」

 それは、既定路線のはずだった。だからこそ、6年も下積みを経験した。彼が結果を残し、若手を育て、今回のようにカルロ・アンチェロッティ監督が勇退する(ブラジル代表監督に就任)瞬間、"真打登場"となってもおかしくなかったが...。

 ラウールの監督デビューは華々しかった。2020年、UEFAユースリーグでU-19マドリードを優勝に導いた。

「常勝のメンタリティを注入!」

 ラウールの采配は絶賛を浴びた。

 そしてラウールは3部のカスティージャを率い、2度にわたって2部昇格プレーオフに進んでいる。2022―2023シーズンにはプレーオフ準決勝で宿敵FCバルセロナのセカンドチーム、バルサ・アトレティックを撃破し、決勝に進出。しかし、決勝は一時、2-0とリードしたにもかかわらず、勝ち切ることができなかった。

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 今シーズンは6位で、あと一歩でプレーオフ出場を逃した(5位までが出場)。結局、レジェンドは2部昇格というミッションを果たせなかった。

 一時は、「すぐにでもトップチームの監督を!」と求める声もあったが、霧散した。勝負の世界は容赦がない。

 今回、新たにマドリーの監督に就任することになったシャビ・アロンソは、選手としてチームにタイトルをもたらしただけではない。監督として1年目でマドリーU-14を無敗優勝させた後、レアル・ソシエダのセカンドチームを2年目で2部に昇格させている。その後、レバークーゼンでのブンデスリーガ無敗優勝など目覚ましい監督ぶりは周知の通りだろう。

 ジョゼップ・グアルディオラなどもそうだが、若くしてトップで采配を振るうには試練をくぐり抜ける必要があるのだ。

 監督として、勝つための仕組みを作れるか?

 徹底的に、それが求められる。レジェンドだ、なんだと名前は通用しない。選手時代の経歴が通用するのは、監督を始める時だけ。そこからは監督としての力量が問われるのだ。

文●小宮良之

【著者プロフィール】こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。

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