人目をはばからず大号泣。日大藤沢のMF藤本歩優が苦しい時、支えとなるのは――かつて日本代表で活躍した父の教え「日々の練習は絶対に裏切らないぞ」

2025年06月11日 安藤隆人

縦を突破され、必死で食い下がったが...

悔しさを糧にさらなる成長を期す藤本。写真:安藤隆人

 インターハイ神奈川県予選の準々決勝、日大藤沢はライバルの桐光学園の前に、延長戦の末に0-2で敗れた。

 試合後、日大藤沢のMF藤本歩優は人目をはばからず大号泣していた。彼は0-0で迎えた63分(40分ハーフ)、「流れを変えてこい。勝たせてこい」と佐藤輝勝監督に背中を押されてピッチに投入されると、持ち前の高い右足のキック精度と縦への推進力を駆使して、チームに勢いをもたらした。

 しかし、延長戦で落とし穴が待っていた。延長後半5分、左サイドで藤本よりも11分前に、同じく流れを変える存在として投入されていた桐光学園のMF山田留偉とマッチアップした。山田は藤本の守備に対し、フェイントを仕掛けて縦が空いたと見るや、そのまま一気に加速してドリブルし、右ポケット深くまでボールを運んだ。

 藤本は必死で食い下がったが、山田に完全に前に入られてそのままクロスを上げられると、ニアで10番の倉持慶太がヘッドで突き刺した。これが決勝点となった。

「縦に行かれてしまった後に、『何がなんでもクロスを上げさせない』という気持ちで対応できたかというと、そうではなかった。普段の練習からクロス一本も上げさせないという気持ちが強かったのかどうかと言われたら、正直、クエスチョンマークが出てくるような対応をしてしまった。勝たせるために入ったのに、負けさせてしまった」
 
 大号泣の理由はこれだけではなかった。

「去年のインターハイ予選の準決勝の桐光学園戦でも、0-2と劣勢の中で投入させてもらって、流れを変えるために1点を取りに行かないといけないという場面で、僕のミスから試合を決定づけられる3点目を決められてしまった。あれから自分なりに努力をして成長できたと思っていた1年後に、同じシチュエーションでやられてしまった。本当に情けないし、みんなに申し訳ない気持ちでいっぱいです」

 その表情からは、こみ上げてくる悔しさが痛いほど伝わる。藤本は今、自分自身と真正面から向き合っていた。

 今年と昨年の立場は、ほぼ同じ。スターターというより、途中から試合に入って流れを変える役割を担っている。最高学年となったゆえに、スタメンから出たい気持ちは強い。同時に自分の立ち位置も十分に理解している。

「3年生になって思ったことは、スタートは常に狙いながらも、メンバーが決まった後は自分の置かれた立場でできることを探していくしか道はないということ。役割を理解してこなしつつ、チームの勝利のために全力を尽くすしかないと思っています。だからこそ、今日のようにその役割ができないどころか、逆の結果を招いてしまうことは自分の甘さだし、これでは本当に厳しいと思いました」

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