オフ・ザ・ボールの連係がなければ、守備が堅い豪州の背後を突くのは難しい。だからこそ効くプレーも。運ぶドリブルだ【日本代表】

2025年06月06日 清水英斗

当たり前にあった、相手DFを惑わす動きが乏しい

鈴木(写真)と佐野は、スペースを狙う意志が途中から感じられ、いくつかの好プレーを見せた。(C)SOCCER DIGEST

[W杯最終予選]日本 0-1 オーストラリア/6月5日/パーススタジアム

 5日にアウェーで行なわれたワールドカップ・アジア最終予選のオーストラリア戦は、日本がボールを持ちつつも守備ブロックを崩せず、最後は終了間際の失点により、0-1で敗れた。

 システムは共に3-4-2-1。守備時のオーストラリアは両ウイングハーフを下げ、5-2-3で構える。日本はホームのオーストラリアがハイプレスに来ると予想したのか、序盤からポゼッションの安定を意識していた。3バックとダブルボランチが真ん中に立って相手を寄せつつ、左シャドーの鎌田大地がサイドに下りてパスを受ける。右サイドでは鈴木唯人が同様の動きで受け手になろうとし、時折、藤田譲瑠チマがサイドに出ることもあった。

 両ウイングハーフの平河悠と俵積田晃太が大外に張り、相手ウイングハーフや最終ラインを釘付けにしているので、鎌田や鈴木らは中盤サイドでフリーで受けられる。オーストラリアは時間帯によっては守備ブロックを上げてきたが、終盤を除けば、日本が危機を感じる場面は少なかった。

 ただし、日本は下がったりサイドに開いたりする選手が多い分、1トップの大橋祐紀の周りに人が少ない。縦パスを入れると、必ずそこで攻撃が止まってしまう。一度さばいた後に鎌田や鈴木らがライン間へ入っていくが、相手MFも一緒にプレスバックして来るので、崩せない。攻撃のスピードが上がらなかった。
 
 俵積田が何度も飛び出しを狙っても、あっさりと相手CBにカバーされてしまうのは、オフ・ザ・ボールで優位を作っていないからだ。鎌田が下がれば、守田英正が潜る。鎌田が開けば、南野拓実が逆サイドから寄ったり、飛び出したり、三笘薫が中へ入ってコース取りを変えたり。こうした今までは当たり前にあった、相手DFを惑わす動きが乏しい。鎌田が下がったら、そこで受けて終了。攻撃がぶつ切りだった。

 たとえば61分、相手の背後へ飛び出した大橋へ、藤田からスルーパスが出て、チャンスを迎えた場面がある。この時はライン間に鎌田と鈴木が立ち、相手の両CBの注意を引きつけたので、広がった隙間から大橋が飛び出しを成功させることができた。こうしたオフ・ザ・ボールの連係がなければ、守備が堅いオーストラリアの背後を突くのは難しい。

 ただし、この状況だからこそ、効くプレーもあった。運ぶドリブルだ。28分、町田浩樹からすき間を通す縦パスに対し、逆サイドまで顔を出した鈴木が受けてターン。ロングドリブルを始めた。相手MFの追走を許さず、最後はシュートへ。また、49分には鎌田のフリックパスを受けた佐野海舟が、ロングドリブルで敵陣へ侵入し、最後は俵積田が中へ切り込み、クロスを入れた。

 どちらの場面も、俵積田、大橋、平河らが相手5バックを釘付けにしているので、ライン間のスペースは大きく空いている。味方も立っていない。そこへドリブルで侵入する。背後は取らせてくれないが、相手ラインはズルズル下がっていき、そのままゴール前へたどり着ける。これは効果的な攻めだった。鈴木と佐野は、このスペースを狙う意志が途中から感じられ、いくつかの好プレーを見せた。

【画像】日本代表のオーストラリア戦出場16選手&監督の採点・寸評を一挙紹介! 最高点は対人の強さを発揮したCB。代表デビュー組の評価は?

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