【現地発】内容で圧倒したのに…悔いの残る敗北を喫した世界王者ドイツ

2016年07月08日 熊崎敬

前半アディショナルタイムの失点で主導権を明け渡すことに…。

写真はキンミッヒ。高い位置取りで再三好クロスを右サイドから上げ続けたが…。守備でも悔いを残した。 写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

 史上最多4度目の優勝を狙ったドイツが、開催国フランスとの準決勝で敗退した。
 
 事実上の決勝戦とも称されたこの一戦、ドイツには不安材料があった。CBフメルスが出場停止、MFケディラとFWゴメスが故障と、3人の主力を欠いたからだ。
 
 だが前半のドイツは、ほとんど不安を感じさせなかった。両SBがFWのように高い位置を取って断続的に攻撃を仕掛け、フランスをゴール前に釘付けにする。
 
 タレントでサッカーをするフランスとは違い、ドイツは熟練された組織として戦う。猛攻を繰り広げた前半に先制点が決まっていれば、彼らは確実に勝っていただろう。
 
 ところが、勝負は予期せぬ方向へと流れていく。
 
 前半終了間際、フランスのCKでシュバインシュタイガーがハンドでPKを献上。厳しいジャッジだったが、シュバインシュタイガーは手からボールに飛び込んでいた。これはベテランらしからぬミスと言っていい。
 
 この失点で、ドイツは掴んでいた主導権を明け渡してしまうことになった。
 
 後半もドイツが攻め、フランスが守る展開は変わらない。だが、風向きは大きく変わった。先制したフランスが守備に集中し、しっかりとスペースを消したため、ドイツは前半のように押し込むことができなくなった。
 
 そして59分、再三、対角線に精度の高いロングフィードを蹴っていたCBボアテングが故障。これでドイツは、さらに苦境に追い込まれることになった。
 
 リズムを失ったドイツに、やがて焦りが見え始めた。そして72分、右SBキンミッヒがボールを奪われ、ムスタフィは不用意に飛び込んでポグバにかわされ、さらに守護神ノイアーのクリアが小さかったこともあって、決定的な2点目を許してしまう。
 
 ドイツは懸命に反撃に出たが、最後までフランス・ゴールを破ることができなかった。4度目のEURO制覇を目指した世界王者の戦いは、準決勝でピリオドが打たれることになった。
 
 ボール支配率では65対35と圧倒。それだけにドイツとしては悔いが残る敗戦だろう。多くの記者たちも釈然としない様子で、スタジアムから去っていった。
 
 内容で圧倒しながら、自滅のような格好でタイトルを逃したドイツ。この敗北を国民が忘れ去るまで、しばらく時間が必要になりそうだ。
 
現地取材・文:熊崎 敬
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