ホルヘ・サンパオリという男――清武弘嗣の新たなボスが持つ仰天エピソードの数々

2016年07月06日 チヅル・デ・ガルシア

「ビエルサ以上のこだわりを持つ男」

セビージャ就任会見の場でサンパオリは「私はセビージャが世界中からリスペクトされるようなクラブとして君臨することを願う」と力強く語った。 (C) REUTERS/AFLO

 清武弘嗣の新天地となったスペインの名門クラブ・セビージャが、このたびアルゼンチン人のホルヘ・サンパオリを新監督として迎え入れた。
 
 サンパオリはマルセロ・ビエルサの信奉者として知られ、チリ代表監督として2014年のブラジル・ワールドカップではマラカナンで王者スペインを2-0と撃沈して話題となり、昨年のコパ・アメリカで優勝を果たしてチリに初のタイトルをもたらした経歴を持っている。
 
 自他共に認める「ビエルサのファン」だが、チリ代表を指揮していた頃は、その戦術マニアぶりに同国のメディアから「ビエルサ以上にこだわりを持つ男」とも呼ばれた。
 
 指導者として駆け出しだった頃のサンパオリは、当時ニューウェルスの監督を務めていたビエルサの指導法と哲学に強く感銘を受け、ビエルサが会見で話をする度に録音し、それを毎日、繰り返し聞きながらジョギングしていた。
 
 ゲームへの執着心も強く、出身地カシルダのクラブ、アルムニの監督としてサンタフェ州の地方リーグに出場していた時には、退場処分となったあと、ピッチ脇の木に登って試合を見届けたというエピソードもある。
 
 また、ビエルサがアルゼンチン代表監督に就任していた当時は、時間の許す限り代表のトレーニング施設まで出向き、望遠鏡を使って練習を覗き見していた。「文字通りサッカーのことばかり考えて生きている」という自己紹介は、決して大袈裟ではない。
 
 崇拝するビエルサ同様、サンパオリは試合の録画を何度も見て対戦相手を徹底的に分析する。チリ代表時代は、対戦相手のゲームのポイントとなる場面を編集してプレー集を作り、試合前に選手たちに見せていた。
 
 具体的な例を見せながら、各局面で各自がどのように対応すべきかを説明することにより、どのような試合になるかというイメージを抱かせた状態で選手たちをピッチに送り込むのである。
 
 サンパオリの名が世界のサッカー界で話題になったのは、チリ代表を任される前、同国の名門ウニベルシダ・デ・チレの監督を務めていた頃だ。3-3-1-3のフォーメーションを採用して高い連動性からスペースを隈なくカバーし、ビエルサ式の高い位置でのプレッシングとスピーディーな攻撃で一世を風靡したのだ。
 

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