【現地発】拙攻拙守、足を引っ張る監督……自滅した“タレント集団”ベルギー

2016年07月02日 熊崎敬

7割方スタンドを埋めたサポーターの存在も、重圧に変わった。

打つ手が裏目に出、チームを停滞させる原因となったヴィルモッツ監督(右)。キャプテンにして攻撃の要でもあるアザール(左)は、流れを変えられなかった。 (C) Getty Images

 FIFAランキング2位、優勝候補の一角にも挙げられるベルギーが、初出場のウェールズに屈した。
 
 先制しながら、1-3の逆転負け。ウェールズは代表チーム史上最高のゲームをやってのけたが、ベルギーとしては自滅に近い。
 
 ベルギーはアフリカ勢に似ていて、勢いに乗ると手がつけられない強さを見せるが、受けに回ると脆い。そのネガティブな一面が出た。
 
 31分のCKからの同点弾は、ウェールズに完全にマークを外され、フリーのA・ウィリアムズに決められた。
 
 55分の2点目は、エリア内でボールを受けたロブソン=カヌーに一度のフェイクでマークを完全に外された。
 
 86分の3点目は、アルデルワイレルドがヴォークスの動きについていけず、目の前でヘディングを許した。
 
 これだけ敵をフリーにしたら、3失点も致し方ない。
 
 序盤は押し込んだものの、追いつかれてからは攻撃もリズムを失った。
 
 痛かったのは、監督がチームを助けるどころか、足を引っ張ってしまったことだ。
 
 後半早々、ヴィルモッツ監督は右サイドのドリブラー、カラスコを下げ、中盤の底にフェライニを投入する。これで攻撃陣のバランスが崩れた。
 
 左サイドのアザールが闇雲にドリブルを仕掛けるようになり、中盤のポジションが混乱。デ・ブルイネは仕事場を探して、右へ左へとさまよっていた。
 
 一度崩したバランスは元には戻らず、ベルギーは力攻めを繰り返してはウェールズに押し返される羽目に。時間の経過とともに焦りが募り、ミスがミスを呼ぶ悪循環に陥った。
 
 ちなみに、この一戦が行なわれたリールはベルギー国境に程近く、スタンドは7割方ベルギーサポーターで埋め尽くされた。
 
 試合前は、これがベルギー有利に働くと思われたが、逆効果だった。勝利を信じるサポーターの大声援が、チームの重圧となったからだ。
 
 逆境のなかで、あっさりと崩れたベルギー。タレント軍団はひとつのチームになることなく、EUROから姿を消した。
 
現地取材・文:熊崎 敬
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