【リオ五輪代表】ストライカー然とした風格を漂わせる浅野拓磨の冷静と情熱

2016年07月01日 古田土恵介(サッカーダイジェスト)

「(得点シーンは)味方が見えていたが、自分で打つことを選択した」

相手の必死のスライディングを躱し、GKの逆をついて得点。浅野はまさにストライカーたる働きを披露した。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 シュート3本、1得点・1アシスト。DFふたりを引きずる力強いドリブルや、最前線からの積極的なプレッシングも披露。6月29日に行なわれたU-23日本代表とU-23南アフリカ代表の試合で、浅野拓磨は十分なインパクトを残した……ように見えた。
 
 だが、プレミアリーグの強豪クラブであるアーセナルからオファーを受けている浅野は、「満足できるものではなかった」と南アフリカ戦の出来を一刀両断する。「ゴールという形で勝利に貢献でいたのは成果として挙げてもいいかなと思うけど、もっと得点を奪えたし、ボールを失うシーンもあった」
 
 それでも、後半開始早々の48分にトドメとなる4点目を突き刺したシーンを振り返って、「植田(直通)がボールを持って、僕は『パスが出てくる』と信じて走った」と、仲間との連係に一切の不安がないことを示唆している。
 
 まさに「落ち着いていた」パフォーマンスを象徴する場面だった。植田が最後方でフリーでボールを持っているのを確認すると、まず横に動いてスペースを作り、そこにパスを呼び込むウェーブの動きで抜け出す。
 
 相手DFは、浅野の動きに釣られてサイドのスペースを警戒して身体を外に向けているが、真ん中をフィードを蹴られたために急な方向転換を強いられてミス。この点は確かに、パスの受け手と出し手の意思疎通が完璧だったと言っていいだろう。
 
 ただ、6番のモティバ・ムバロが必死に足を伸ばして植田からのフィードになんとかタッチしたため、ボールが減速。それを迎えに行った浅野のファーストタッチは、全力で戻ってきた2番のリバルド・コッツィーエ方向へと転がってしまった。
 
 まだ浅野はシュート態勢になってないにもかかわらず、コッツィーエがいとも簡単にスライディングでのブロックを試みたため事なきを得たが、DFに自ら寄って行ってしまったトラップミスは減点材料か。
 
 もちろん、滑ったDFを何事もなかったかのようにヒラリとかわして、GKの動きとは逆にシュートを打った技術には「さすが」と言うほかなく、「味方が見えていたが、自分で打つことを選択した」という言葉からは、真のストライカー然とした、ある種の風格さえ感じた。

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