相手守護神がキャッチミスを犯した瞬間に、ほぼ勝敗は決した。
神懸かり的なゴールラッシュを披露したプラティニ。これほどまでに、ひとりの選手が突出した活躍を見せた大会は、他にはないだろう。 (C) Getty Images
デンマークとの開幕戦をパリのパルク・デ・プランスで戦い、これを1-0でモノにした開催国フランスは、そこから長い地方遠征に出、全ての敵を圧倒的な攻撃力をもって撃破。6月27日、パリに戻ってきた。
決勝の相手はスペイン。堅固な守備をウリにしたチームであり、グループステージでは最終節で終了間際の劇的ゴールを決めて西ドイツ(当時)を蹴落とし、準決勝ではデンマークをPK戦の末に下してきた。
対するフランスは、ここまでの4試合で12得点。対照的なチームが、アンリ・ドロネー・カップを懸けて対峙した。
フランスがベストの布陣であるのに対し、スペインはアントニオ・マセーダ、ラファエル・ゴルディージョという主力2人を出場停止で欠いたが、それでも前半は健闘し、スコアレスで後半を迎えることになった。
そして、試合の趨勢を決定付ける最初のゴールは、意外なかたちで開催国にもたらされる。57分、ベルナール・ラコンブが倒されて得た、ゴール正面という好位置でのFKで、スペシャリストのミシェル・プラティニはゴール右隅の低い位置にボールを飛ばした。
スペインのGKルイス・アルコナーダはこれに反応し、両腕でキャッチ。と思われた次の瞬間、脇からボールがこぼれ、ゆっくりとゴールラインを越える。名手といわれた男の、痛恨のミスだった。
試合の主導権を握りつつあったチームに先制点がもたらされたことで、ますます両チームの立場は明確となり、残り時間をフランスは危なげなく過ごす。それは、終了5分前にDFイボン・ルルーが退場処分を食らっても、変わることはなかった。
そして90分が経過。その時、フランスはカウンターを仕掛け、ジャン・ティガナからブルーノ・ヴェロンにスルーパスが通る。完全に抜け出したヴェロンは、アルコナーダの飛び出しを冷静に見極めて、浮き球でダメ押しのゴールを決めた。
フランス初優勝。同国によって初のメジャータイトル獲得は、破壊力抜群のアタッキングサッカーによって成し遂げられた。その中心となったのが、キャプテンとしてチームをリードし、華麗な中盤を構成する一方で、点取り屋としても活躍したプラティニだった。
5試合全てでゴールを奪っての9得点。しかも全てが決勝という、まさに将軍の独り舞台となった。
そのプラティニが、高々と優勝トロフィーを掲げる。70年代半ばより進めてきた代表チーム強化を進めてきた名将ミシェル・イダルゴの労が報われた瞬間であり、フランス・サッカー界が実りの時期を迎えた。
その後、フランスは98年ワールドカップ、EURO2000を制することになるが、初のメジャー大会優勝の思い出は格別であり、いまだ国民の記憶に深く刻み込まれている。そして今、母国での欧州制覇が32年ぶりに再現されることを、誰もが願っている。
【回想】フランスで過去に開催された3つのメジャー大会
◎6月27 日に行なわれた過去のEUROの試合
◇1984年フランス大会
決勝
フランス 2-0 スペイン
◇2004年ポルトガル大会
準々決勝
チェコ 3-0 デンマーク
◇2012年ポーランド・ウクライナ大会
準決勝
スペイン 0(4PK2)0 ポルトガル
※日付は全て現地時間
決勝の相手はスペイン。堅固な守備をウリにしたチームであり、グループステージでは最終節で終了間際の劇的ゴールを決めて西ドイツ(当時)を蹴落とし、準決勝ではデンマークをPK戦の末に下してきた。
対するフランスは、ここまでの4試合で12得点。対照的なチームが、アンリ・ドロネー・カップを懸けて対峙した。
フランスがベストの布陣であるのに対し、スペインはアントニオ・マセーダ、ラファエル・ゴルディージョという主力2人を出場停止で欠いたが、それでも前半は健闘し、スコアレスで後半を迎えることになった。
そして、試合の趨勢を決定付ける最初のゴールは、意外なかたちで開催国にもたらされる。57分、ベルナール・ラコンブが倒されて得た、ゴール正面という好位置でのFKで、スペシャリストのミシェル・プラティニはゴール右隅の低い位置にボールを飛ばした。
スペインのGKルイス・アルコナーダはこれに反応し、両腕でキャッチ。と思われた次の瞬間、脇からボールがこぼれ、ゆっくりとゴールラインを越える。名手といわれた男の、痛恨のミスだった。
試合の主導権を握りつつあったチームに先制点がもたらされたことで、ますます両チームの立場は明確となり、残り時間をフランスは危なげなく過ごす。それは、終了5分前にDFイボン・ルルーが退場処分を食らっても、変わることはなかった。
そして90分が経過。その時、フランスはカウンターを仕掛け、ジャン・ティガナからブルーノ・ヴェロンにスルーパスが通る。完全に抜け出したヴェロンは、アルコナーダの飛び出しを冷静に見極めて、浮き球でダメ押しのゴールを決めた。
フランス初優勝。同国によって初のメジャータイトル獲得は、破壊力抜群のアタッキングサッカーによって成し遂げられた。その中心となったのが、キャプテンとしてチームをリードし、華麗な中盤を構成する一方で、点取り屋としても活躍したプラティニだった。
5試合全てでゴールを奪っての9得点。しかも全てが決勝という、まさに将軍の独り舞台となった。
そのプラティニが、高々と優勝トロフィーを掲げる。70年代半ばより進めてきた代表チーム強化を進めてきた名将ミシェル・イダルゴの労が報われた瞬間であり、フランス・サッカー界が実りの時期を迎えた。
その後、フランスは98年ワールドカップ、EURO2000を制することになるが、初のメジャー大会優勝の思い出は格別であり、いまだ国民の記憶に深く刻み込まれている。そして今、母国での欧州制覇が32年ぶりに再現されることを、誰もが願っている。
【回想】フランスで過去に開催された3つのメジャー大会
◎6月27 日に行なわれた過去のEUROの試合
◇1984年フランス大会
決勝
フランス 2-0 スペイン
◇2004年ポルトガル大会
準々決勝
チェコ 3-0 デンマーク
◇2012年ポーランド・ウクライナ大会
準決勝
スペイン 0(4PK2)0 ポルトガル
※日付は全て現地時間