決め手は手倉森監督からの直電。興梠が明かす、オーバーエイジ決断までの心の揺れ動き

2016年06月28日 塚越 始(サッカーダイジェスト)

  「俺は、慎三と一緒に戦いたい」 。その一言に、心が突き動かされた。

公式戦11試合ぶりのゴールを決めた興梠。神戸戦では2点を決め、リーグ通算8得点に伸ばした。(C)J.LEAGUE PHOTOS

[J1・1stステージ17節] 浦和レッズ 3-1 ヴィッセル神戸
6月25日/埼玉スタジアム2002
 

 浦和のFW興梠慎三が6月25日の神戸戦で、2ゴールを叩き込み勝利に大きく貢献した。得点は、公式戦11試合ぶり。しかも、リオデジャネイロ五輪でのオーバーエイジ招集を、2日前に正式に発表していた。

 試合後、興梠は「モヤモヤした感じがしていたが、(リオに)『行く』と決断し、結果につなげられて良かった」と安堵した様子。リオ五輪について「決めたからには全力でやる。ゴールも求められるが、みんなが伸び伸びとできるようにサポートしていく」と抱負を語った。
 
 試合は久々に浦和が立ち上がりから主導権を握り、34分、左ストッパーに入った森脇良太
のダイアゴナル(対角線に貫く)のクロスに、李忠成がヘッドでGKキム・スンギュに競り勝ち中央に折り返し、興梠が無人のゴールへ冷静にシュートを流し込む。「チュン(李)のお陰。ごっつあんゴールですよ」と、1点目を決める。
 
 さらに前半アディショナルタイムの45+1分、李と駒井善成の連係から右サイドを打開。李がシュート性のクロスを放って相手DFの足にボールが当たったが、「届くだろうかと中に入って行ったところに、ちょうど来た」とタイミングよく飛び込んだ興梠が再び右足で合わせ、2点目を奪ってみせた。
 
 その後、両チーム1点ずつを取り合い、浦和が3-1の勝利。2連勝で第1ステージを終え、今週始まる第2ステージ(初戦はアウェーの福岡戦)に弾みをつけた。
 
 試合後、オーバーエイジ決断までの経緯や心の変化について聞かれた興梠は、次のように説明した。
 
 当初、オーバーエイジ招集について、日本協会からクラブを通じて興梠に打診があった。リオ五輪日本代表の手倉森誠監督は、日本代表のコーチとして、興梠のプレーも人間性も把握したうえでのアプローチだったという。
 
 それでも、浦和で今季最多ゴールを決めているエースストライカーとしての自覚は強い。2年連続あと一歩のところでタイトルを逃してきた興梠は、リオ五輪に出場することで、リーグ戦最大5試合を欠場しなければならない状況を危惧。「代表チームよりも、まずチームでなにかを成し遂げたいという想いがある。だから『チームに残りたい』と、最初はクラブから断りを入れさせてもらった」そうだ。

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 しかし、その後、手倉森監督から興梠の携帯に直接電話が掛かってきたという。指揮官は言った。
 
「俺は、慎三と一緒に戦いたい」
 
 その一言に、興梠の心は突き動かされた。
 

次ページ一度「やる」と決めたからには、覚悟はできた。「全力で求められる役割をする」。

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