選手権で突きつけられた現実。『赤い彗星』の攻守の要・西田煌は「一歩引くのではなく、一歩前に出るプレー」で挑戦者としてがっつく

2025年03月25日 安藤隆人

選手権ですべて途中出場。悔しさが残る大会に

プレー強度で“違い”を見せる西田。東福岡で攻守のキーマンだ。写真:安藤隆人

 今年、国立競技場の舞台に『赤い彗星』が帰ってきた。9年前、埼玉スタジアム2002で選手権優勝を果たして以来、ずっと全国ベスト4に入ることができなかったが、昨年度の選手権で4強入り。準決勝で前橋育英に1-3で敗れたが、全国の高校サッカーファンに『赤い彗星再び』という大きな印象を与えた。

「国立は、かなり僕も感情が揺さぶられました。もちろん大会前から優勝を目ざしていたのですが、準々決勝で勝って、『あ、本当にあの国立に行けるんだ』と思った時は、本当に奮い立ったし、周りの人たちも喜んでくれた。東福岡の歴史をもっと継続していきたいと思いました」

 こう語るのは、選手権で5試合すべてに途中出場したMF西田煌だ。豊富な運動量とセカンドボールの回収、そこからテンポの良いパス出しで攻撃のリズムを作るボランチで、今年は攻守の要となる存在だ。

 2年生だった昨年は高円宮杯プレミアリーグWESTで19試合に出場。サンフレッチェ広島ユース、帝京長岡を相手に2ゴールをマークした。

 しかし、リーグ序盤と終盤にレギュラーの座を掴んだかに見えたが、選手権本戦では前述した通り、すべて途中出場。悔しい気持ちが残る大会だった。

「自分の中で昨年は本当にいろんなことを考えさせてくれた1年でした。東福岡に入学してから300人近い部員の中で、どうやって自分の色を出して周りからの信頼を掴んで試合に出るかをずっと考えていました。そのなかで昨年に見つけたのが、セカンドボールを回収して、味方を助けるというプレーでした」
 
 広島の廿日市FCアカデミーから、東福岡に進んだ2学年上の兄・頼(立正大学)の背中を追って飛び込んだ。兄から「もしかすると3年間、トップの試合に出られないかもしれないぞ」という言葉をもらい、覚悟を決めていたが、東福岡での競争は激しかった。

 当時、西田は自分のことを「パス、ドリブルもできるオールラウンダー」と評していたが、一方で「ルーキーリーグではそこを評価してもらえましたが、トップにはそんな選手はゴロゴロいる。何か他の選手にはない武器を身につけないといけないと思っていました」と試行錯誤していた。そんな時、チーム全体に突きつけられた課題に彼は目を向けた。

「プレー強度の不足がチーム全体の課題に上がっていたので、そこは自分が出していけるんじゃないかと思った時に、一気に意識が変わりました。昔から守備は得意な方で、なかでもインターセプトや、何よりガムシャラにプレーするのは好きでした。だからこそ、今度はただガムシャラにやるのではなく、より頭を使って賢くやることで自分の武器にしていけば、チームからも信頼を得られると思いました」

 普段の練習からボールが落ちる場所を予測して相手より早くポジションに入ったり、先に身体を入れて自分が拾える空間を作ったりと、細かいところまで意識するようになったからこそ、西田はプレミアでも一定の信頼を得た。選手権もスタメンはなかったが、全試合に起用されたことが、それを物語っている。

「当然、うまい選手には憧れますが、自分の能力を考えた時にそこを伸ばすのではなく、セカンド回収はチームに必要なもので、そこで上に行きたいなと思った。だからこそ、今年はそれをより磨いていきたいんです」

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