進化するドイツの根幹をなす「勤勉さ」と「駆け引きの上手さ」

2016年06月27日 熊崎敬

前半ですべきことしてリード。後半は流しながら要所を締める。

 3-0で危険な挑戦者スロバキアを圧倒。ドイツの完勝と言って良い試合だった。
 
 2年前のブラジル・ワールドカップから続くドイツの強さは、勤勉で肉体的資質に恵まれたドイツ人が、スペインのように器用にパスを繋ぎ、攻撃的なサッカーをするところにある。
 
 彼らは、スペイン(バルセロナ)的サッカーをドイツ風にアレンジして、さらに完成度を高めている。
 
 敵のペナルティエリアにSBが走り込み、そこに精度の高いスルーパスが次々と繰り出される。こうしたシーンは、まさにスペインのサッカーを見ているかのようだ。
 
 新たなもののエッセンスを導入すると、往々にして本来持っていた良いところを失ってしまうもの。だが、ドイツは彼らが本来持っている素晴らしい伝統も忘れてはいない。
 
 そのひとつが、勤勉さだ。
 
 この試合は序盤のボアテングの一撃で、ほぼ勝負が決まってしまった感があるが、それでもドイツの選手たちはさぼらなかった。
 
 流すところは流すが、行くべきところはしっかり行く。派手さに寄りかからず、やるべきことをやる。勝負が決まった後も、手を抜かない。
 
 こうした勤勉さは、やはり国民性によるところが大きいだろう。
 
 もうひとつの伝統が、駆け引きの上手さだ。
 
 ひるんだ敵にさらに圧力をかけ、反撃に出る敵の鼻っ柱を折る。ドイツはこうした流れを断ち切るプレーが上手いが、スロバキア戦でもそれが見られた。
 
 43分、ドラクスラーの巧みなドリブルからゴメスのゴールが生まれる。この2点目でスタジアムは、ほぼ勝負がついたという雰囲気になった。このまま、ハーフタイムを迎えれば良い。
 
 だがドイツは、ここから一気にギアを上げた。休むどころか運動量を上げ、前から果敢にスロバキアに圧力をかけたのだ。
 
 しかも、ハイプレスの先陣を切ったのは、ゴールを決めたゴメス。決定的な2点目で意気消沈したスロバキアを、一気に押し潰そうとした。こういうことができるのが、ドイツの強さである。
 
 前半にやれることをしっかりやって勝負を決め、後半は流しながらも要所を締める。こうしてドイツは、完璧に近いかたちで勝利を手に入れた。
 
 冷や汗をかいたフランス、死闘を演じる羽目になったポルトガルとは対照的な、余力を残しての勝ち上がり。やはり、終わってみればドイツが優勝、ということになるのだろうか。
 
現地取材・文:熊崎 敬
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