ブライトンCEOの発言から読み解く三笘薫のステップアップ。クラブの成功の礎は“継続性”にあり。重要な分岐点は今季の成績【現地発】

2025年03月14日 田嶋コウスケ

「将来的に彼らが移籍する可能性は十分にある」

今夏の去就が注目される三笘。マーケットでは相変わらず人気銘柄だ。(C)Getty Images

 3月8日、イングランド・プレミアリーグのブライトンでCEO(最高経営責任者)を務めるポール・バーバー氏が、英BBC放送のテレビ番組に出演してインタビューに応じた。BBCは最後の質問で、日本代表MF三笘薫の去就について尋ねた。インタビュアーは次のように問いかけた。

「多くのクラブが、カオル・ミトマやカルロス・バレバの獲得を狙っています。ブライトンサポーターに向けて、『彼らは来季もここに残る』と言えますか? 彼らが離れるなら、誰かを代わりに補強するのか?」と。バーバー氏は、顔色ひとつ変えることなく答えた。

「我々のトッププレーヤーたちは、当然ながらビッグクラブから高額な移籍金と共に関心をいつも寄せられている。我々としては、できるだけ長く彼らをチームに留めたい。しかし、クラブの経営モデルとして、適切なタイミングで選手を売却することは重要な戦略である。それが今夏になると言うつもりはないが、将来的に彼らが移籍する可能性は十分にある」

 三笘の名前が出たことから、同氏の発言は日本でも大きな話題になったようだが、今回のインタビューにはポイントがあった。BBC放送は、以下の質問をバーバーCEOにぶつけた。

①「なぜブライトンの経営がうまくいっているのか」
②「2023−24シーズンに2億ポンド以上の売上を記録したが、それを上回る数字を今後も目ざすのか」
③「欧州カップ戦出場を目ざしているのか」
④「三笘を含む主力選手の去就は」

 注目したのは、ブライトンの経営方針、2億ポンドの売上、欧州カップ戦についての返答だ。CEOの言葉からブライトンの経営方針が改めて確認できるので、ここに質疑応答を記したい。

─―先週、ブライトンは過去最高となる2億2240万ポンド(約426億円)の売上を記録したと発表しました。3年連続の黒字で、その数字は7300万ポンド(約140億円)に達しました。ブライトンはイングランド2部チャンピオンシップ時代と比べると、この7年で売上は762%も増加しています。驚異的です。ブライトンがこうした成果を上げることができている理由は?

「我々は明確なビジョンを持ち、安定したオーナーシップのもとで経営を行なっている。移籍市場においても独自の方針を持ち、その方針を貫いてきた。この継続性が、プレミアリーグで8シーズンにわたる成功につながっていると思う。今後も長くプレミアに留まりたい」

─―ファンの期待値は上がるばかりです。2億ポンド以上の売上を今後も目ざすのか。

「毎年、選手を獲得しなければならず、黒字を維持するのは非常に難しい。最近は多くの選手を売却していたので黒字が出ているが、逆に(今季の財務報告分となる)昨夏は多くの選手を獲得した。そのため、来年は今回のようにはならないはず。しかし、ピッチ内では今後も成長を続けたい。シーズン前半戦は順調にスタートできたが、まだ道は長い」

─―再びヨーロッパの舞台を目ざしていますか? チャンピオンズリーグ出場は現実的な目標になり得るか。

「来季はプレミアリーグから最大5チームがCLに出場できる可能性があるが(※注)、出場権争いは非常に熾烈だ。現時点で5位から10位まで非常に接戦である。我々としては、またヨーロッパの舞台に戻りたい。欧州リーグに出場した昨シーズンは特別な経験ができた。もう一度、味わいたいが、同じようにヨーロッパを目ざすチームは多い。簡単ではない」

(注)2024-25シーズンから欧州CLは大会フォーマットが変わり、参加チーム数が32クラブから36クラブに拡大された。その一環で、UEFAが定めるリーグ係数ランクの上位2か国が、来季CLの追加出場権枠を獲得できる。
 
 今回のインタビューについて、スポーツサイトの『ジ・アスレティック』のアンディ・ネイラー記者にその印象を聞いてみた。

 長年クラブを追いかけるネイラー記者の第一声は「バーバー氏の発言に目新しさはない」。三笘を含む主力選手の去就に関するコメントについても「CEOは、これまでのクラブ方針と同じことを述べている。新しい情報はないと思う」と話した。

 他のクラブ番も「主力の去就を含めて、新しい情報は特にない。変わりはないね。バーバーCEOがこれまで繰り返し述べてきたこと」と語った。

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