カメレオンのようにアプローチを変更。ブライトンが白星を重ね始めた理由。三笘薫の見解は?【現地発】

2025年03月07日 田嶋コウスケ

1月中旬からリーグで5勝2敗の白星先行

ブライトンを率いるヒュルツェラー監督。戦術の浸透にある程度の時間を要したが、着実に結果を出している。(C)Getty Images

 三笘薫が所属するブライトンが好調だ。

 敵地で行なわれたFAカップ5回戦でニューカッスルを破り、ベスト8に進出。国内リーグでも3連勝で順位を8位に上げ、来季チャンピオンズリーグ出場権が手に入る4位まで勝点「4差」に迫った。

 とはいえ、今季のプレミアリーグは、3位のノッティンガム・フォレストから10位のアストンビラまで、合計8チームが6ポイント差にひしめく大混戦。少しでも調子を落とせば二桁順位までポジションを下げる危険もはらんではいるが、ブライトンは怪我人が順次復帰してきた1月中旬からリーグで5勝2敗の白星先行である。シーズン後半戦に入って調子を上げてきたと、そう評価できるだろう。

 就任から約9か月という時間的制約を考えても、ファビアン・ヒュルツェラー体制の足取りは決して悪くない。

 そんなブライトンの取材を続けていて、キーボードを打つ手が少し止まってしまうことがある。編集部から「ヒュルツェラーのサッカーを説明してください」と要望された時だ。

 監督には、分かりやすいカラーがあることが多い。

 たとえば、ブライトンの前任であるロベルト・デ・ゼルビ監督なら「ビルドアップ」。GKやCBの最後尾から足元にパスをつなげることで、敵を前方に釣り出す。そうすることで「敵陣に空いたスペースを有効活用する」という特殊な戦術を用いた。

 リバプールを率いたユルゲン・クロップ監督なら「ゲーゲンプレス」。敵にボールを奪われた瞬間から激しくプレスを仕掛け、ボールを奪い返してショートカウンターを繰り出す。ドイツ人指揮官が「ヘビーメタル・フットボール」と表現したそのプレースタイルは、自身の代名詞でもあった。
 
 ところが、である。

 ヒュルツェラー監督のスタイルを一言で要約しようとすると、これが非常に難しい。攻撃的でもあるし、守備的でもある。ポゼッション重視でもあるし、カウンターに重きも置いている。前からプレスを積極的に仕掛ける一方で、三笘を始めとするウインガー陣には自陣深くまで下がるよう求めてもいる。

 それゆえ、キーボードを打つ手が止まってしまうのだ。

 ヒュルツェラー監督の戦術について、英メディアも似たような見解を示している。英紙タイムズは次のように記す。

「ヒュルツェラーは、ドイツから現われた早熟の天才だ。現代サッカー界でトップを走る名将たちと少し異なり、彼はひとつの型にハマっていない。ユルゲン・クロップ監督やトーマス・トゥヘル監督の影響が濃いように見えるが、レバークーゼンを率いるシャビ・アロンソから、オリバー・グラスナー時代のフランクフルトまで、実に多くのチームを研究してきた。それがヒュルツェラーだ」

 貪欲に知識を吸収し、自身のスタイルに取り入れようとする積極的な姿勢は、昨季まで率いたドイツ2部ザンクトパウリ在任時代にも見えた。

 ヒュルツェラーは昨年6月にブライトンの新指揮官に電撃就任したが、実はその半年前にドイツのウインターブレイクを利用してブライトンを訪れ、デ・ゼルビ前監督の試合を視察している。関係者によると、ヒュルツェラーはデ・ゼルビ監督の熱心なファンで、昨季のブライトンの試合をほぼ全てビデオでチェックしていたという。

 実際、今季のブライトンのプレーを見ていても、デ・ゼルビの代名詞である「後方からのビルドアップ」のエッセンスを、ヒュルツェラーは継承している。

 こうした「後方からのビルドアップ」に加え、「最前線からのプレス」や「強度の高い守備」、「敵に攻め込まれた際の早めのリトリート」などのプレー原則を持ちながら、ヒュルツェラーは試合ごとに"カメレオン"のようにアプローチを変えている。

 たとえばフォーメーションを見ても4-2-3-1を軸としつつ、対戦相手に応じて3-4-2-1を併用。左サイドからのアタックを多用する「左肩上がり」の時もあれば、右サイドを攻撃の軸とする時もある。それゆえ、カメレオンのようにカラーが掴めないのだ。

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