【不屈のストライカー特別インタビュー（６回／全10回）】

　不屈の闘志で成り上がり、その左足で光と影を目定めた李忠成。ユニホームを脱いだ2023年９月からは新たなステージで挑戦を続けている。特別インタビューで胸の内に迫った。

――◆――◆――

　ヨーロッパの移籍市場が閉まる最終日は、必ずと言っていいほど予想外の出来事が起こる。これまでに数々のドラマやハプニングが生まれてきたなか、李氏もその当事者の１人だ。

　サンフレッチェ広島から2012年１月にサウサンプトンに移籍した李氏だが、あとちょっと早くオファーを受けていれば、その前の夏にイングランドの別チームに加入する可能性があったようだ。

「QPRから電話がかかってきたんです。オーナーがエアアジアのCEOを務めているアジア人なんですよ。彼から英語で電話がかかってきて、『君と契約したい。契約できないか』『お金はこれぐらいだ』って言われて。『分かりました。行きます』って言ったら、それがウインドウが閉まる本当５時間前ぐらいで、手続きが間に合わなくて無理だったんですよ。だけど、僕がもしヨーロッパにいたら、それで決まっちゃう場合もあるので。すごい世界です」

【画像】セルジオ越後、小野伸二、大久保嘉人、中村憲剛ら28名が厳選した「Ｊ歴代ベスト11」を一挙公開！
 

　さらに、当時２部で、今季にプレミアリーグ再昇格を果たしたサウサンプトンと契約した際も、急転直下で超が付くほどドタバタだったという。

「あの時は次の日にドイツのチームと契約をするために、現地に入ってホテルで泊まっていたんです。寝ている時に代理人から電話がかかってきて、『サウサンプトンがもしかしたらオファーするかもしれない。『お前、明日絶対に（ドイツのチームと）契約すんな』って言われて。本当、朝方にサウサンプトン加入が決まったんですよ。

　契約ってすごい分単位で決まっていくので、朝の６時ぐらいに電話がかかってきて、『契約するから今からイギリスに来い。チケットも取ったから』って。朝の６時半ぐらいかな、下に降りていったら、ドイツの契約しようとしてたクラブのGM、社長、監督、コーチ陣の５人くらいが待ってて、『お前何やってんだ』ってなって。自分はもう何も言わないで、契約はしないと。タクシーに乗ってバって行ったんですけど、本当に修羅場ですね。それでイギリスに飛んで仮契約して、サウサンプトンに入りました。

　移籍はそれくらい分単位で変わっていくのは、サッカー選手は知っておかなきゃいけないですね。あそこでちょっとひよってサインしたらそれで終わってしまうので」