【総括】U-20アジア杯を戦った“新・調子乗り世代”の強みと課題は? 船越監督は要望「帰ってすぐファイティングポーズを取ってほしい」

2025年03月01日 松尾祐希

恐れずにチャレンジするパワーは凄まじい

U-20W杯の出場権を手にした船越ジャパン。写真:佐藤博之

 2月中旬に中国の深圳で幕を開けたU-20アジアカップ。若き日本代表は準決勝でオーストラリアに0-2で敗戦。優勝を逃したものの、上位4か国に与えられるU-20ワールドカップの出場権を獲得した。最低限の目標を果たし、チームは帰国の途についた。

 収穫もあれば、課題もある。実り多き大会だったのは間違いない。

 まずポジティブな要素は、ロス五輪世代の個性がはっきりと見られた点だろう。前評判は決して高くなかったが、それでも選手たちは力を発揮。一戦ごとに逞しさが増した。

 キャプテンのCB市原吏音(大宮)は空中戦の強さとクレバーな守りに加え、リーダーシップでチームを統率。相方のCB喜多壱也(京都)は自慢の左足で攻撃の起点となり、課題だった守備の強度でも成長の跡を残した。

 SBでは右の梅木怜(今治)と左の髙橋仁胡(C大阪)が奮起。球際で怯まずにファイトしたのはもちろん、前者は推進力、後者は正確なキックでチャンスに絡んだ。

 ボランチの小倉幸成(法政大)は"中盤の掃除屋"として機能し、コンビを組んだMF大関友翔(川崎)は"走れる司令塔"として10番の仕事を全う。トップ下やサイドハーフで起用されたMF佐藤龍之介(岡山)は攻守で戦術理解度の高さを示し、アタッキングサードでは決定的な働きをした。主力組の選手たちが持ち味を出し、"個"で戦える可能性を感じさせた。

 また、メンタリティも特筆すべき部分だ。とにかく、このチームは明るい。グループで固まらず、全体で和気あいあいとした空気がある。何より、良くも悪くも怖いもの知らずの一面がある。大胆不敵な市原のキャラクターの影響かもしれないが、まずはトライし、どんな状況でも前に突き進む。良い意味で重圧を感じ、楽しみながら乗り越えていく力は強みだろう。
 
 その"カラー"が色濃く映し出されたのは、勝てばU-20ワールドカップ出場が決まるイランとの準々決勝だった。

 試合前日から「緊張している」という声もあったが、それ以上に感じられたのは、この大一番を楽しめる雰囲気だ。FW高岡伶颯(日章学園/サウサンプトン加入内定)も「ワクワクしている」と笑顔で言い切り、過緊張の選手は数えるほどしかいなかった。

 試合では序盤に失点したが、ピッチ上では誰ひとり動じていない。1-1で迎えたPK戦でも、誰もが楽しんで勝ち切った。誤解を恐れずに言えば"ノリが良い"というか、恐れずにチャレンジするパワーは凄まじい。喜多もイラン戦を次のように振り返る。

「僕もアップが一番緊張していたけど、始まってみれば楽しかった。ワールドカップ出場が懸かっている試合だからとかではなく、より緊張感を持って、楽しくプレーできた」

 そういう意味では1987年生まれ組が軸となり、槙野智章、柏木陽介、安田理大、森島康仁、内田篤人ら明るいキャラクターが顔を揃えたかつてのU-20代表チームに近しいのかもしれない。"調子乗り世代"と評され、07年のU-20ワールドカップではベスト16入りを果たした先輩たちに通ずるものが、今のチームにもあるだけに"新・調子乗り世代"と言ってもいいだろう。

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