「ブランドが薄れたのは事実」斬新で魅力的な鹿島を再構築するために――「チャレンジしてタイトルを獲らないと」【中田浩二FDに聞く②】

2025年02月13日 元川悦子

鹿島のフィロソフィーを共有しているのは大きい

現役時代は鹿島で5度のリーグ優勝を経験した中田FD。タイトル奪還に「本気でやらなきゃいけない」と力を込める。写真:梅月智史(サッカーダイジェスト写真部)

 Jリーグ創設33年目となる2025年シーズンが、2月14日にいよいよ幕を開ける。ご存じの通り、過去32年間で8度のJ1優勝を誇るのが、鹿島アントラーズだ。

 昨年10月から強化トップの要職に就いている中田浩二フットボールダイレクターは、1998、2000、01、08、09年の5回のタイトル獲得を鹿島で選手として経験しているが、「僕らの時も優勝したからこそ『もっと』という思いになった。今の選手たちも1つ、タイトルを獲れれば変わるんだろうと思う」と経験値を踏まえながら語る。

「それを本気で取りにいくために何をしなきゃいけないかを考えた時に、1つの参考例としてヴィッセル神戸がある。彼らは2023年に初タイトルを獲ったことで、武藤(嘉紀)とか大迫(勇也)とかも『どうしても連覇したい』ということで、昨年もあれだけのプレーをしていましたよね。

 ウチの選手もタイトルを獲るためにはそれくらい本気でやらなきゃいけない。それは選手だけじゃなくて、クラブ全体がそうなんだと思います」と、中田FDはマインドチェンジの必要性を強調した。

 実際、2016年の優勝を経験しているのは、現メンバーだと柴崎岳、植田直通、鈴木優磨、三竿健斗の4人だけ。若い世代は『常勝軍団の実像』がイメージできないかもしれない。

 ゆえに、高校・大卒の新人や他クラブで活躍した若手を獲得しようと動いても、断られるケースが増えているという。10年くらい前までだと、多くの選手が「鹿島に行って試合に出るようになれば、日本代表にステップアップできる」と魅力を感じて、二つ返事で移籍を決断したものだが、近年は地位が低下していると言わざるを得ないだろう。
 
「(FDになって)ブランドが薄れたのは事実なんだなというのを再認識しましたね。僕らは今までもあぐらをかいていたわけじゃないけど、もうそういうチームじゃない。これからはチャレンジして、タイトルを獲っていかないといけない。

 それはもともと理解していたつもりですけど、痛感したので、もっと魅力的なクラブになる必要がある。『アントラーズへ行けばもっとうまくなれる』『タイトルが獲れる』『海外に行ける』と思ってもらえるようにしなきゃいけないのは認識しています」と、彼は強い危機感を吐露した。

 斬新で魅力的な鹿島を再構築していくために、名将・鬼木達新監督は頼りになる存在に違いない。指揮官の選手時代に、中田FDはプロ2年目の99年に1年間、鹿島で共闘しただけだが、「勝負強さ」や「勝利に貪欲にこだわる」といった鹿島のフィロソフィーを共有しているのは大きい。

 そこは鹿島をともに強くしていくうえで、絶対に忘れてはいけない部分。そのうえで、川崎フロンターレで高度な技術とつなぎをベースにした華麗なサッカーを創造したという実績があるのは心強い要素だ。

 当時の川崎には、中村憲剛や大島僚太を筆頭に、技術に秀でている選手が何人もいたことが大きなアドバンテージだった。しかしながら、鹿島にもかつては小笠原満男や本山雅志、野沢拓也といったテクニシャンがいた。その基準をベースにできれば、技術志向のスタイルを追求していくことは不可能ではないはずだ。

【画像】"最強鹿島"の構築を目指す鹿島アントラーズのトレーニングに潜入!

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