着々と進む浦和の“ダブル8番”構想。渡邊凌磨のボランチ起用が意味すること。攻撃のタレントを見ても得点力は高まりそうだ

2025年01月25日 河治良幸

敵陣でサッカーをする時間を増やしたいという狙い

ボランチの主軸になりそうな渡邊。「攻撃と守備の舵を切る選手は絶対に必要」と語る。写真:梅月智史(サッカーダイジェスト写真部)

 浦和レッズは現在、沖縄の金武町でキャンプを行なっている。昨シーズンの途中に再任したマチェイ・スコルジャ監督は実質3年目となるが、リーグ優勝のためには得点力アップが不可欠であることを認識しており、大きなテコ入れを図るためのキャンプと言えそうだ。

 象徴的なのが二人のボランチに"8番"の役割を求めるという形だ。昨年の終盤戦はトップ下に定着した渡邊凌磨をボランチの軸にほぼ固定して、サミュエル・グスタフソン、松本泰志、安居海渡といった選手と組ませている。

 渡邊は「僕がボランチに入る意図をしっかりくんでプレーしたい。なんでこういう守備をやってるのか、攻撃をやってるのかという意図を考えながら、攻撃と守備の舵を切る選手は絶対に必要だと思う」と語る。

 渡邊は2列目から得点に関わるプレーもできる選手だが、同時に戦術理解が高く、精力的に動きながら周りに発信していくこともできる。昨シーズンの後半戦は、岩尾憲が徳島ヴォルティスに、伊藤敦樹がベルギーのヘントに移籍し、"チームの心臓"とも例えられるボランチの主力が二枚いなくなった状態で、何とかいるメンバーで回して乗り切った。
 
 そこに改めて渡邊を配置することで、ボールを動かしながら攻撃に厚みを持たせて、さらに高い位置からボールを奪う守備で、相手陣内でサッカーをする時間を増やしたいという意図が見られる。

 戦力面で見れば、昨シーズンのベストイレブンに選ばれたマテウス・サヴィオを柏レイソルから獲得し、クロアチアやベルギーで経験を積んだ金子拓郎、サンフレッチェ広島の主力に定着していた松本という3人のタレントが早くもチームに馴染んできている。M・サヴィオは2列目の中央と左サイド、左利きのドリブラーである金子は右サイド、松本はボランチとトップ下を兼任。また浦和のアカデミー出身で、アルビレックス新潟から加入した長倉幹樹もキャンプから意欲的なプレーを見せ、チアゴ・サンタナとのエース争いも熱を帯びそうだ。

 ボランチの安居が一時、怪我で全体練習や練習試合のメンバーから外れた時期があり、中盤から前のポジションも全て固定しているわけではないが、M・サヴィオを2列目の左と中央の2ポジション、松本を"10番"と"8番"の両方で起用することにより、選手の組み合わせにバリエーションを作り出している。

 たとえばM・サヴィオを2列目の中央で起用すれば、原口元気をはじめ松尾佑介、本間至恩など、豊富なタレントを擁する左サイドを活性化することができるわけだ。逆にM・サヴィオが左の場合、松本はもちろん中島翔哉、さらにはT・サンタナと長倉を縦の2トップに並べる布陣も有効な選択肢になってくる。

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