【バイタルエリアの仕事人】vol.48 李忠成|「僕は何人?」韓国代表での出来事。感情から感動が消えた2年間も回想「俺、何やってんだ」

2025年01月30日 有園僚真(サッカーダイジェストWeb編集部)

失敗→ご飯を食べて寝る→また失敗を繰り返していたんじゃ意味がない

新年早々のロングインタビューで熱い思いを語った李氏。テーマは多岐に渡った。写真:田中研治(サッカーダイジェスト写真部)

 攻守の重要局面となる「バイタルエリア」で輝く選手たちのサッカー観に迫る連載インタビューシリーズ「バイタルエリアの仕事人」。第48回は、元日本代表の李忠成氏だ。

 努力を重ねていれば、人生で何度かチャンスが訪れる。真価が問われるのは、それをモノにできるかだ。サッカー選手として数々の成功を収めると同時に、耐え難い挫折を味わった39歳に話を訊いた。

 その時々のターニングポイントに着目し、20年のプロサッカー選手としてのキャリアを振り返ってもらったなか、李氏がまず触れたのは、横河電機(現・横河武蔵野FC)ジュニアユース時代の出来事だ。

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 今回のテーマがバイタルエリアということで、「バイタルエリアって何なんだろう」って思った時に、シュートするエリア、しなきゃいけないエリアかなと。僕の中ではバイタルエリアって真髄だと思うんですね。その真髄を築けたのが横河電機です。

 小学校5年生の時に6年生のセレクションを受けて、6年生の時に横河電機のジュニアユースのチームに入りました。ちょっと異例な、昔はステップアップがなかったじゃないですか。今でこそ久保建英が中学生なのに高校生の部に入ったりしていますけど、それより前の時代なので、それを受け入れてくれた横河電機に感謝しています。自分の中の真髄が築けたのは、小学校6年生の時に中学校3年生と同じ練習をしたからです。

 今まで20年間プロサッカー選手として、色んな国の代表や、プレミアリーグのチェルシーなど色んなクラブと対戦しましたが、僕が小6の時に戦った中3がどのプレーヤーよりも強かったし、速かったです。何も敵いませんでした。そんな彼らにどうすれば自分のプレーが通用するのかをすごく必死に考えていたのが、僕のバイタルエリアです。
 
 今でこそ「バイタルエリアってどこ?」ってなった時に、ペナルティリアの中や、ディフェンスの裏のライン、コーナーフラッグ、ペナルティエリアの周りをみんな指すんですけど、バイタルエリアってストライカーそれぞれで違うと思うんですよ。

 自分のシュートディスタンスが長ければ長いほど変わってくるし、ワンタッチゴーラーだったらもっとゴールエリアに近いエリアが彼らのバイタルエリア。僕は自分がゴールを取れるエリアのことをバイタルエリアと定義しています。

 自分の必殺技を出せるエリアがバイタルエリアで良いと思いますよ。例えば、中村敬斗はカットインシュートが上手いから、デル・ピエロみたいに左斜め45度が彼のバイタルエリアだし、浦和レッズの前田直輝でいえば、右から入っていって、直線じゃなくて斜めのドリブルで、左にも右にも行けるのが彼のバイタルエリアだと思う。

 僕の場合はワンタッチゴールが多くて、左利きだから、左足の角度が上手く保てるところがバイタルエリア。ペナルティエリアの中ですよね。

 なので、僕が今、横川電機時代の話で言ったのは「自分の思考」です。子どもたちにはよく、「まず技術じゃなくて考えることを大切にして」「常に考えていなきゃ。なんで負けたのかを追求しなければ上手くならない」と伝えています。

 失敗→ご飯を食べて寝る→また失敗を繰り返していたんじゃ意味がない。失敗した時に「なぜ」を考えてから再び挑戦する。ビジネス界で言われるPDCAを回していかなきゃ成長しないというのは、横川電機の時に作れた自分の中の思考のバイタルエリアだと思います。

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