【EURO】モドリッチとアルダーー。「10番の光と影」がクロアチアとトルコの明暗を象徴する

2016年06月13日 白鳥大知(サッカーダイジェスト特派)

国民的英雄である両10番のパフォーマンスが試合の行方を大きく左右。

モドリッチ(右)とアルダ(左)はパフォーマンスに雲泥の差があった。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

 ルカ・モドリッチとアルダ・トゥランーー。6月12日のトルコ対クロアチア戦は、自他ともに認める国民的英雄である両10番のパフォーマンスが、試合の行方を大きく左右した。
 
 4-2-3-1の右セントラルMFに入ったモドリッチは、文字通り攻守で躍動。下がり目の位置で巧みにボールを引き出してビルドアップの起点を作れば、中盤の4人、そして右SBのダリヨ・スルナと連携して崩しでもアクセントになる。両チーム最多の58本のパスを供給して52本成功と、司令塔として言うことなしだった。
 
 そして、41分には相手のクリアボールに反応し、後方から走り込んでペナルティーエリア外から右足でダイレクトボレー。ドライブ回転が掛かったボールは、相手GKの脇の下を抜けてゴールネットに突き刺さる。これが値千金の決勝ゴールとなった。
 
 さらに、守備でもタイミングの良いパスカット、出足の良いプレスで貢献。トルコがそれなりにボールを保持しながら、なかなか決定機を作れなかったのは、モドリッチとミラン・バデリの両セントラルMFが最終ラインをプロテクトし、ピンチの芽を摘んでいたからだ。
 
 一方のアルダは、4-3-3の左サイドアタッカーで先発。しかし、明らかに身体が重く、後方から敵にチャージされると踏ん張りがきかず、キープするのが精一杯という有様。前半の半ば過ぎからハカン・チャルハノールとポジションチェンジして右サイドに回ったが、状況は変わらず、32本のパスは後や横方向へのものがほとんど。楔の縦パスをズバズバと通していたモドリッチと違って、"怖さ"が全く感じられず、トルコの攻撃がスピードアップしない主因となっていた。65分にはベンチに下げられたが、それも当然だ。
 
 昨夏、アルダはアトレティコ・マドリーから子供の頃から憧れたバルセロナに移籍した。しかし、クラブの補強禁止処分の影響で前半戦をトレーニングだけに費やしたうえ、1月の正式登録後もレギュラーポジションを獲得できず、公式戦の総出場時間はわずか1170分。1シーズンでたったの13試合分、しかも散発的にしかプレーできなかったのだから、やはりコンディション維持は容易ではなかった――。少なくとも、持ち前の創造性と粘り強さが完全に鳴りを潜めたこの日のパフォーマンスを見る限り、そう結論付けざるをえない。
 
 攻守で躍動して決勝点まで挙げ、ハーフタイムと試合後には自国サポーターから「ルーカ! ルーカ!」の大合唱を浴びたモドリッチと、まるで何もできず、途中交代時にはうつむきながらトボトボとピッチを後にしたアルダ。パルク・デ・プランスのピッチで広がった両ナンバー10の光と影は、クロアチアとトルコの明暗を象徴していた。
 
現地取材・文:白鳥大知(サッカーダイジェスト特派)
 
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