浦和サポーター名乗る男がSNSで人種差別的な投稿。カイオ、浦和が見解。Jリーグからクラブへの「処分なし」

2016年06月12日 塚越 始(サッカーダイジェスト)

14年に人種差別の垂れ幕で無観客試合。昨年もG大阪のパトリックに差別的なツイート。もはや対策には、自治体などとの連携が必要か。

インターセプトから得点の起点になったカイオ。投稿に対して、「僕は黒人であることが誇りだ」とすぐ自らの想いを綴った。(C)SOCCER DIGEST

[J1・1stステージ15節]浦和レッズ 0-2 鹿島アントラーズ
2016年6月11日/埼玉スタジアム2002

   第1ステージ・15節の浦和対鹿島戦後、SNSのツイッターでFWカイオに対して浦和のサポーターを名乗る男性が「黒人死ね」などと投稿した。その後、この人物は投稿を削除。謝罪のメッセージを発したが、アカウントも削除したと見られる。

 浦和は14年にスタジアムのゴール裏の出入り口に人種差別的な発言をした垂れ幕を掲げたことが社会的な問題となり、Jリーグ史上初の無観客試合開催の罰則を受けた。

 その後、浦和は人種差別撲滅に向けたプログラムを策定し、スタジアム及びサッカー界からの差別追放に取り組んできた。

 しかし、昨年11月、さいたま市内の高校生がチャンピオンシップで敗れた腹いせに、G大阪のFWパトリックに対して人種差別的なツイートをして再び問題に。
 
 そして今回、その時と同じような形で、メッセージが発せられた。

 これを受けて、カイオは自身のアカウントで、次のように自身の想いを伝えている。

「世の中には、この様な人は不必要である。差別や偏見を持つこの方は、可哀想で未熟だ。僕は黒人である自分を誇りにしている。神様がこの人を許して欲しいと思うし、この人が自分の人生にもっと愛情を持って欲しい。僕は黒人であることが誇りだからね」
​​
 一方、今回の事案を受けて、浦和は公式ホームページで下記のとおり見解を発表している。

「11日の鹿島戦後、鹿島のカイオ選手に対して、SNSで差別的な投稿がなされたことが確認されました。このような行為については断じて許せるものではなく、誠に遺憾です。

浦和レッズでは、『人種、肌の色、性別、言語、宗教、または出自などに関する差別的あるいは侮辱的な発言または行為を認めない』とする差別撲滅宣言を行ない、提携する国連の友アジア-パシフィックとともに差別撲滅に向けたアクションプログラム(行動計画)を策定し、実施しています。

 浦和レッズは断固として差別を許さず、今後も、サッカーファミリーの一員として、差別撲滅に向けた取り組みを進めてまいります」

 またJリーグも次のようにプレスリリースを発表した。

「15節の試合後、一部 SNS 上に鹿島のカイオ選手に対する差別的と思われる投稿がありました。 JリーグおよびJクラブは差別や暴力のない世界を目指して様々な人権啓発活動に力を入れてまいりました。 そのなかでこのような行為が行なわれたことは、非常に残念なことであります。 本件のような差別的な行為は絶対に許されず、引き続き差別撲滅に向けての取り組みを進めてまいります。

なお本件は、スタジアム外で発生した事象であり、Jリーグによるクラブへの処分はありません」

 浦和はJリーグ最多の観客動員を誇り、スタジアムを訪れる以外にも、数多くのファンやサポーターを抱えている。それだけにスタジアム以外での監視にも限界があるのは事実だ。

 浦和という規模の大きいクラブだからこそ、ファンも言動に注意を払わなければならない状況にある。同様の問題がこれだけ起きているとなると、クラブのみならず、Jリーグや日本サッカー協会、さらに、さいたま市や埼玉県の自治体、教育機関との連携した対応が不可欠となってきそうだ。

 
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事