名波監督も絶賛!最高のリーグデビューを飾った磐田GK・志村のシミュレーション術

2016年06月13日 小田智史(サッカーダイジェスト)

1対1を3度ストップする超絶パフォーマンスに、名波監督も「最高のリーグ戦デビュー」と絶賛。

どんな状況をも想定し、普段の練習に落とし込んでいるからこそ、リーグデビュー戦でも自分の最高のパフォーマンスを出すことができた。 (C)J.LEAGUE PHOTOS

[J1・1stステージ15節]磐田0-0FC東京 6月11日/エコパ
 
 その日、ピッチ上で最も輝きを放ったのは、J1通算150ゴールに王手をかけている前田遼一でも、日本代表に初選出された小林祐希でもなく、リーグ戦デビューを飾った20歳の若武者だった。
 
 カミンスキー(鼠径部痛)、八田直樹(腰痛)が負傷離脱するなか、名波浩監督はリーグ戦出場歴のない高卒2年目の志村をピッチに送り出した。前日の夕食会場で同じテーブルだった櫻内渚によれば、「緊張しているか?」との問いに、「全然(緊張)していません」と答えるほど堂々としていたという。最終ラインの踏ん張りもあってピンチらしいピンチもなく前半を折り返すと、後半ついに見せ場がやってくる。
 
 48分、ゴール前へのクロスがこぼれて前田と1対1を迎えると、迷わず飛び出して胸でシュートストップ。「1本目を防いだことで勢いがついた」と一気に加速する。その7分後にはエリア内でスルーパスを通されて再び1対1となるも、猛然とプッシュをかけてコースを切り、水沼宏太のシュートミスを誘発。極めつけは試合終了間際の87分で、猛スピードで迫ってくるムリキとの1対1を制し、ゴールを死守した。
 
 あまりの冷静なプレーぶりは、「リーグデビュー戦とは思えない」(松浦拓弥)とチームメイトたちも舌を巻くほどだった。しかし、当の志村本人は「普段の練習から試合を想定してやっているんで」と事もなげに言う。
 
「ディフェンスラインのみんなが安定していて、前半はシュートがあまり飛んで来なかったので、後半は(シュートが)来るだろうと思って入りました。こぼれ球であったり、DFが抜かれた時のことも考えていた分、(その局面になっても)そんなに焦りはなかった。飛び出しや1対1の対応は自信を持っているし、1試合を通して集中力を切らさずにできたと思います」
 
 そんな若き守護神の活躍に、名波監督も「志村のファインプレーがなかったら、どうなっていたか分からない。リーグ戦デビューとしては最高だった」と賛辞を惜しまない。
 
「(志村は)3番手、4番手という気構えではなくて、出た時に自分がどういうパフォーマンスをするかにフォーカスして、キャンプからやっていた。紅白戦、練習試合を含めて、今季ここまでほぼミスがなく、非常に充実しているので、自信を持ってピッチに送り出した。彼の強みである1対1の強さ、飛び出すタイミングを発揮してくれたし、これからもやってくれると思います」(名波監督)

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