どれだけ“ぶっちぎり”でも勝てなければ...日章学園はまたもプレミア参入戦敗退。サウサンプトン加入内定の高岡伶颯が明かしたエースの矜持

2024年12月07日 松尾祐希

泥臭く押し込んだ一撃でネットを揺らす

東京Vユース戦で意地の1ゴール。ただ試合には敗れ、「点を取り続けるためにも熱くなるだけじゃダメ」と振り返った。写真:松尾祐希

 今シーズンが始まる前、日章学園のFW高岡伶颯(3年/サウサンプトン加入内定)はこんな言葉を残していた。

「今年のテーマはぶっちぎる」

 相手DFを置き去りにするという意味ではない。誰よりも圧倒的な数字を残し、"ぶっちぎり"の成績を残すという想いから湧き出てきたワードだった。

 今季の成績は圧倒的で、まさに有言実行。県新人戦、九州新人戦、インターハイ予選では全試合でゴール。インターハイ本大会は怪我で欠場したが、U-18高円宮杯プリンスリーグ九州1部では、負傷や海外クラブの練習に参加した関係で出場できないゲームもあるなかで、10ゴールを挙げている。

 公式戦で決められなかったのは、前期のロアッソ熊本U-18戦のみ。「今季ゴールが取れなかった試合は、僕が記憶している限り、あの1試合だけ。結果を残すところは、ちょっと凄みが増している」と原啓太監督も高岡に賛辞を惜しまず、驚異的なペースでゴールを重ねてきた超高校級FWの決定力は凄まじいものがある。

 勝負が懸かった場面での活躍も光り、11月初旬の高校サッカー選手権・宮崎県予選決勝(対宮崎一/5-0)では2ゴールをマーク。とりわけ、後半アディショナルタイムに決めた3人抜き弾は圧巻だった。

 そうして迎えたU-18高円宮杯プレミアリーグ参入プレーオフ。二度勝利すれば昇格が決まるレギュレーションで、昨季は1回戦で京都U-18に対し、2-0とリードした状況から試合をひっくり返されて涙をのんでいる。高岡自身も左足で強烈なミドルシュートを決めたが、勝利に導けなかった。

 だからこそ、今年こそは、という想いは強い。1回戦の相手はプリンスリーグ関東1部王者の東京ヴェルディユース。攻守で抜群の力を誇るチームに対し、日章学園は前半の12分までに2点を失う苦しい戦いとなった。
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 4-4-2の最前線で先発した高岡はビハインドを跳ね返すべく、チームのために奔走。しかし、前半は完璧に封じられて決定機を作り出せなかった。後半に入ってサイド攻撃が機能し、高岡にも良い状態でボールが入ってくる機会が増えていく。

 67分にはMF小峠魅藍(3年)のロングスローをDF吉川昂我(3年)がニアですらすと、ファーサイドで高岡が合わせた。泥臭く押し込んだ一撃でネットを揺らし、チームは1点差に迫る。

 さらにここからギアを上げ、高岡は貪欲にゴールを目ざした。76分には狡猾な動きで相手DFをかわし、最終ラインの背後でボールを受ける。GKと1対1を迎えたが、シュートは枠を捉え切れずバーを超えた。

 高岡は最後まで2点目を奪えず、チームも1-2で敗戦。キャプテンマークを巻いたエースはうなだれ、悔しさを噛み締めながら天を仰いだ。

 2年連続での敗退――。試合後、高岡は敗戦を受け止めつつ、次のように振り返る。

「当然、負けている状況で最終的には『俺が決める』という気持ちがあった。でも、本当の意味で得点を取り続けるためにも、熱くなるだけじゃダメ。熱さの中に冷静さが必要になる。自分の予備動作も試合を通じて上達していかないといけない」

 大一番で確実に決められる選手に――。プレミアリーグ昇格の夢は潰えたが、戦いはまだ終わっていない。12月28日には高校生活最後の大舞台が幕を開ける。昨季の選手権は1回戦で名古屋にPK負け。自身も無得点に終わり、PK戦でも失敗している。

 悔しさを力に変え、この1年間を過ごしてきた。有終の美を飾るべく、最注目のストライカーは次なる戦いに向けて走り出す。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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