マドリーがユーベ敏腕SDの引き抜きを画策。本人の決断は?

2016年06月10日 ジャンルカ・ディ・マルツィオ

パラティチはこれまでに数多くの「ヒット」を叩き出してきた。

ユベントスで辣腕を振るうパラティチ。今や天下のマドリーからも誘われる存在になった。(C)Getty Images

 欧州王者のレアル・マドリーは、すでに名声を確立したワールドクラスなら山ほど抱えている。それでも、さらなる戦力強化と話題作りのためならば、今夏も金に糸目をつけずにビッグネームを獲得するだろう。
 
 一方で問題は、移籍市場での失敗が多く、さらに次代を担うヤングタレントが少ないこと。これまではブレイクするタイミングが合わなかったり、それを待ちきれずに手放してしまったりで、マドリーで花開かずに終わった若手は少なくない。
 
 例えどれだけ高いブランド力と多くの資金を持っていたとしても、明確な判断基準と評価眼が伴わなければ、移籍市場における無駄遣いは自然と増えてしまう。スポーツディレクター職を置かず、フロレンティーノ・ペレス会長が補強の全てを仕切っているマドリーは、強化部門が優れているとはお世辞にも言えない。
 
 マドリーがここ何週間かの間、執念深くファビオ・パラティチにアプローチを続けてきた理由は、まさしくそこにある。ユべントスでゼネラルマネジャーのジュゼッペ・マロッタの片腕を務めるこのスポーツディレクターは、これまでに数多くの「ヒット」を叩き出してきた。
 
 ポール・ポグバ、キングスレー・コマン(現バイエルン)というメガクラブに埋もれた若きタレントの引き抜き、アルトゥーロ・ビダル(現バイエルン)やシュテファン・リヒトシュタイナーといった過小評価されてきた中堅の発掘、そしてカルロス・テベス(現ボカ)、アンドレア・バルザーリ、パトリス・エブラなどベテランの再評価まで、その功績は枚挙に暇がない。
 
 マドリーのジネディーヌ・ジダン監督も、自らの古巣で辣腕を振るうパラティチを高く評価しており、ペレス会長はスポーツディレクターの椅子をオファーした。
 
 しかし、パラティチの返答は「ノー、サンキュー」。ユーベで仕事を続け、マドリーに肩を並べるようなチームを築くというミッションのほうが、今の彼にとっては魅力的に映っているようだ。
 
 ダニエウ・アウベスの獲得(内定済み)でスタートした今夏もまた、パラティチはユーベで新たなヒットを生み出すに違いない。
 
文:ジャンルカ・ディ・マルツィオ
翻訳:片野道郎
 
※当コラムではディ・マルツィオ氏のオフィシャルサイトにも掲載されていない『サッカーダイジェストWEB』だけの独占記事をお届けします。
 
【著者プロフィール】
Gianluca DI MARZIO(ジャンルカ・ディ・マルツィオ)/1974年3月28日、ナポリ近郊の町に生まれる。パドバ大学在学中の94年に地元のTV局でキャリアをスタートし、2004年から『スカイ・イタリア』に所属する。元プロ監督で現コメンテーターの父ジャンニを通して得た人脈を活かして幅広いネットワークを築き、「移籍マーケットの専門記者」という独自のフィールドを開拓。この分野ではイタリアの第一人者で、2013年1月にグアルディオラのバイエルン入りをスクープしてからは、他の欧州諸国でも注目を集めている。
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