【中村憲剛の欧州サッカー観戦記】CL決勝でシメオネとジダンの見事な采配に興奮!

2016年06月07日 中村憲剛

マドリーの先制点でシメオネのプランが崩壊した。

PK戦にまでもつれたCL決勝。その激闘を中村憲剛が独自の視点で振り返った。 (C) Reona Takenaka

 マドリード・ダービーとなった5月28日のチャンピオンズ・リーグ(CL)決勝は、観ていてかなりワクワクしました。立ち上がりはアトレティコがいつもどおりにタイトなプレスを掛けていくシーンが目立ちましたが、モドリッチに2回くらいかわされたところから、徐々に普段のサッカーができなくなっていっていました。
 
 5分のFKでカゼミーロに得点を許しかねない大ピンチを招き、その対応策を練れないまま15分のFKでセルヒオ・ラモスに決められて、アトレティコのプランは完全に崩れましたね。
 
 前からプレスを掛ける形でバルセロナとバイエルンを撃破してきたので、そのやり方でなんとしても先制点が欲しかったはずですが、2年前に経験したとはいえ、決勝とダービーという独特な空気の中で先に失点したことで、歯車が狂ってしまいました。
 
 失点シーンを振り返ると、S・ラモスに対するステファン・サビッチのマークは確かに軽かった。ただ、問題はその前です。
 
 5分のFKでGKとDFラインの間にボールを入れられ、危険なシーンを作られてしまったので、失点時のFKときにはアトレティコのDFラインがずるずる下がってしまっていたんです。あれでは、フィジカルの強い選手が多いマドリーをはね返すのは難しいですよ。
 
 この1点でアトレティコは前半の主導権を失いました。マドリーのあれだけ能力の高い選手達にまじめに守備をやられたら、簡単には崩せません。
 
 前半のアトレティコの攻めは単発で、厚みのある攻撃ができたのはわずかで、相手のアンカーのカゼミーロの横に生まれていた空きスペースを上手く使えなかったのも痛かったですね。先手を取られてボールを"持たされた"ことで、激しいプレスからのショートカウンターという最大の持ち味が出にくくなっていました。
 

次ページ功を奏したシメオネの“施策”。

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