中村憲剛が語る川崎退任の鬼木達監督への想いと感謝。決して忘れられない“オニさん”からの教えと言葉

2024年10月29日 本田健介(サッカーダイジェスト)

「まだ受け止め切れない」

多くのタイトルもともに手にしてきたふたり。その間には濃密なエピソードが。(C)SOCCER DIGEST

 サッカーダイジェストで毎号連載中の中村憲剛氏のコラム「蹴球賢語」。今回は今季限りで川崎の指揮官を退任することを発表した鬼木達監督への想いを語ってくれている。中村氏にとって鬼木監督とはどんな存在で、どんな歩みをともにしてきたのか。今の率直な胸の内を綴ってくれたコラムを、WEB版として先行してお届けする(全2回の1回目)
 
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 先日、オニさん(鬼木達監督)の今季限りでの退任が発表されました。リリースでその言葉を読ませていただきましたが、これまでにない感情が胸に押し寄せてきました。正直、今も受け止めきれていません。心にぽっかり穴が空いた想いです。それほどオニさんの存在は自分にとって、そしてフロンターレにとって大きかったんだなと突きつけられた感覚でした。
 
 監督という職業はいつか交代するのが当たり前。オニさんも僕が現役引退を告げた時に「自分が指揮している間に憲剛の引退は来るんだろうな」と話していました。なので、オニさんがいつかフロンターレの監督から退く日が来ると僕も頭では理解していました。
 
 でも、いざ向き合ってみるとやはり難しいものがあります。それこそ"そこにいて当たり前の人"だったからこそ...。2017年から指揮して8年、選手時代、コーチ時代を含めればフロンターレにいて26年ですからね。これだけの結果、功績を残した人がいなくなるわけですから、やっぱり簡単には整理できません。
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 個人的には、元同僚であり、先輩であり、同じポジションのプレーヤーであり、何回もご飯を食べに行った仲で、オニさんが引退してコーチになって帰ってきた時は、コーチとキャプテンの間柄で、あーでもない、こーでもないと何回も話し合いました。その後、監督と選手の関係になり、僕が引退したあとはFRO(フロンターレ・リレーションズ・オーガナイザー)と監督としての関わりに。関係性は変われど20年近く一緒にいました。
 
 それだけ長く苦楽をともにし、成長させてもらい、もちろんキレイごとばかりではなく意見をぶつけることもありました。でも、それは互いに真剣に取り組んできたからであり、それ以上にオニさんは選手のことを、チームのことを何よりも考えてくれる人で、僕らの声をどんな時でも聞いてくれました。そして観てくれる人たちを感動させようと情熱を傾けたうえで、とにかく勝つことにすべての力を捧げられる人でした。

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