長野のエースから「なでしこのエース」へ。得点王を独走する横山久美がクリアすべき課題

2016年05月29日 小田智史(サッカーダイジェスト)

唯一の決定機を仕留め、得点王争いを独走する。

浦和L戦でもゴールを決め、今季の得点数は12に。2位に7点差をつけ、得点ランクトップを独走する。 (C)Getty Images

 AC長野パルセイロ・レディースは、11節の浦和レッドダイヤモンズレディース(浦和L)戦を1-0で制し、7勝1分3敗と王者・日テレベレーザに次ぐ2位でリーグ戦の中断期を迎えた。なでしこリーグ1部昇格1年目での見事な"快走劇"。「他のチームに比べてタレントはいない」(本田美登里監督)なか、チームを牽引するのがエースの横山久美だ。
 
 浦和L戦でも、さすがの決定力を見せた。19分、2トップを組む泊志穂とともに猛然とボールホルダーにプレッシャーをかけて相手のミスを誘発。パスカットしてそのままペナルティエリア内に侵入すると、飛び出してきたGKとの1対1でも冷静にゴール左隅に流し込み、貴重な先制点をもたらした。この日、最初にして唯一の決定機。映像で横山のスカウティングをしてきたという相手GKの平尾知佳が、「(駆け引きで)裏をかかれてしまった。なでしこ(ジャパン)に入っている選手だけに本当に巧い」と舌を巻く一撃だった。
 
「得点シーンは、トマ(泊)が頑張ってディフェンスしてくれて、相手もタッチミスしていたので、そこで取れたらチャンスと思って狙いに行きました。これまでの試合では、1対1になった時にシュートが遅くてDFが間に合ってしまったんですけど、それを上手く修正できたと思います」(横山)
 
 絶対的なストライカーは、チームメイトからの信頼も厚い。"戦術・横山"と言うと少々大袈裟だが、周りの選手には「まずは横山へ」という共通理解がある。アメリカでのプレー経験があるボランチの國澤志乃は、横山の存在の大きさについてこう語る。
 
「横山はタメも作れるし、自分で点も取れる。長野のサッカーを象徴する選手だと思います。まずは横山を見て、(ボールを)預けて、パスを出すか、シュートに行くかは、横山の判断に任せる。ボールを奪った後に、『横山に預けたらなんとかなる』という思いはあります。厳しいマークをかい潜って点を取ってくれているので、本当に助かっています」
 
 浦和L戦のゴールで今季の得点数を12に伸ばし、2位に7点差をつけて得点ランクトップを独走。2014年(30点)、15年(35点)と2部リーグで得点王に輝いたのに続き、今季もタイトル獲得の期待がかかる。本人は「特に意識はしていません」としつつも、「毎試合ゴールを取ることによって、結果的に得点王が取れたらいいですね」と色気も示す。

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