【移籍専門記者】アザールとハメスは退団濃厚。攻撃的MF市場の2大主役の新天地は?

2016年05月21日 ジャンルカ・ディ・マルツィオ

いずれもこれから具体的な移籍交渉に発展しそうな気配だ。

ハメス(左)とアザール(右)は今夏の退団が濃厚。いずれも熾烈な争奪戦に発展しそうだ。(C)Getty Images

 今夏の攻撃的MF市場で主役になりそうな大物が、エデン・アザール(チェルシー)とハメス・ロドリゲス(レアル・マドリー)の2人だ。
 
 アザールは、今シーズン半ばまでのパフォーマンスや振る舞いに強い不満を持ったチェルシー・オーナーのロマン・アブラモビッチが、すでに春先の時点で片腕のマリーナ・グラノフスカヤに売却先を探すよう指示を出しており、来シーズンの構想から外されている。終盤戦になって調子が上向き、アブラモビッチの気分が変わらないとも限らないが、少なくとも今のところそういう話は私のところに入ってきていない。
 
 売却先として最も可能性があるのはパリ・サンジェルマン。ズラタン・イブラヒモビッチの退団によってエディンソン・カバーニとの共存を考えなくていい来シーズンは、両サイドに純粋なドリブラーを起用できる可能性が生まれる。アザールはそこに打ってつけ。右からアンヘル・ディ・マリア、カバーニ、アザールという3トップは、たしかに魅力的だ。
 
 ただ、チェルシーは1億ユーロ(約125億円)という、おいそれとは払えない値札をつけている。よって、本人と相思相愛のジネディーヌ・ジダンが指揮を執るレアル・マドリー、前チェルシー監督でアザールをいまだに買っているジョゼ・モウリーニョを新指揮官に迎える見込みのマンチェスター・ユナイテッドを含めて、他に手を出そうというクラブは現時点で現われていない。
 
 一方のパリSGにしても、まだ具体的な動きがあるわけではなく、あくまで構想レベルだ。これからの動きに注目が集まる。
 
 ハメスについては、99%移籍が確実だ。今シーズンは満足な出場機会が得られず、とりわけジダンが監督になった年明け以降はチーム内での位置づけが明らかに低下した事情もあって、本人は不満を溜め込んでいる。
 
 それを受けて、代理人のジョルジュ・メンデスはすでに他クラブへのプロモーションを開始している。
 
 売り込み先は資金力豊富なプレミアリーグのメガクラブで、マンチェスターの2チームが最有力候補だ。なかでもユナイテッドは、同じく顧客のモウリーニョの監督就任によってメンデスの影響力がさらに強まる見通しであり、妥当な選択肢と言えるだろう。
 
 ただ、現時点ではユナイテッドと具体的な交渉に発展しているわけではなく、他クラブにも割り込む余地はある。ジョゼップ・グアルディオラ新監督の下でハメスに適したポゼッションサッカーを導入する見込みのシティ、そしてアザールと共にハメスをウイングの新戦力候補に挙げているパリSGにも、まだまだチャンスはある。
 
文:ジャンルカ・ディ・マルツィオ
翻訳:片野道郎
 
※ワールドサッカーダイジェスト2016.06.02号より加筆・修正。
 
【著者プロフィール】
Gianluca DI MARZIO(ジャンルカ・ディ・マルツィオ)/1974年3月28日、ナポリ近郊の町に生まれる。パドバ大学在学中の94年に地元のTV局でキャリアをスタートし、2004年から『スカイ・イタリア』に所属する。元プロ監督で現コメンテーターの父ジャンニを通して得た人脈を活かして幅広いネットワークを築き、「移籍マーケットの専門記者」という独自のフィールドを開拓。この分野ではイタリアの第一人者で、2013年1月にグアルディオラのバイエルン入りをスクープしてからは、他の欧州諸国でも注目を集めている。
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