「すごく楽しい」「人間的な成長も大切」名門・昌平を率いる玉田圭司が監督就任4か月で感じた“育成年代のやりがいと価値”

2024年07月08日 河野 正

流経大柏戦で経験した“初めての完敗”

高校サッカーの現場での充実感を口にする玉田監督。インターハイでの采配にも注目だ。写真:河野正

 高円宮杯U-18プレミアリーグEASTは7月6、7の両日に第11節の6試合が行なわれ、流経大柏高と柏レイソルU-18を除く10チームが1回戦を終えた。昨季はプレミアリーグWEST所属の横浜FCユースが勝点22の暫定首位で折り返し、2連覇を狙う青森山田高は同6位。今節でいったん中断し、第12節は8月31日に再開する。
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 プレミアリーグ昇格2年目の昌平高は4勝4分け3敗の勝点16、暫定5位で前半戦を終了。この日は9位のFC東京U-18と対戦し、2-2で引き分けた。

 昌平は前半3分、FW鄭志鍚がFW松本レイの右クロスを蹴り込んで早々と先制。しかし25分、自分たちの左CKから逆襲を浴び、MF田中希和に独走を許して追いつかれた。後半開始からMF山口豪太を投入すると、バーを直撃した5分の弾丸シュートに続き、10分にはGKの手を弾き飛ばす強烈な一撃を放つなどして攻勢に出た。

 主将でアンカーの大谷湊斗、得点ランキング3位タイのMF長瑠喜という攻撃の大黒柱を怪我で欠いたが、後半半ばまでは昌平のペースで進んだ。そうして17分、右SB安藤愛斗の右クロスを左SB上原悠都がヘッドで合わせ、今季初得点となる勝ち越しゴールを奪った。

 ところがこの直後からFC東京の猛攻を受け、19分にFW浅田琉偉の右クロスをボランチ永野修都に右足ボレーで叩き込まれ、再度追い付かれた。得点ランク3位タイの大型FW尾谷ディヴァインチネドゥには、シュートを1本も打たせなかったが、ともに後半途中から出場した浅田とMF大町彪悟には、際どいものを含めて計7本も許した。30分に立て続けに決定的なシュートを3度放たれ、DFの素早いブロックなどで事なきを得たが、いくらか守備に安定感を欠く内容ではあった。

 最後尾で戦況を見届けたGK佐々木智太郎は、「条件は相手も同じですが、終盤はこの暑さで守備陣の動きや連携が鈍くなったと思います」と説明。午後4時開始ながら気温36度の猛暑の上、照り付ける日差しは盛夏と変わらぬ過酷な条件だった。

 前半戦の昌平の戦績は高校勢に3勝1分け1敗、クラブチーム勢に1勝3分け2敗。22得点は川崎フロンターレU-18と並んで最多、15失点は中間の6位となっている。
 
 昨春、昌平のスペシャルコーチに就任し、今年3月から指揮を執る元日本代表の玉田圭司監督は、「引き分けに終わったけれど、私はポジティブに捕らえています」とひと言でこの試合を評した。

 これには訳がある。1-3で敗れた前節の流経大柏戦は、「プレミア3敗の中で完敗というものを初めて経験した」と指揮官。昌平にしては多くの時間帯でボールを持たれる珍しい内容で、シュート数でも7対17と大差をつけられた。この試合に出場した大谷も「同じ負けでも横浜FC戦と鹿島アントラーズ戦は多くのチャンスを決められなかったが、流経柏は本当に強かった」と潔く敗戦を認めた。

 そんな戦いから1週間後、選手は悪いイメージを引きずらずにファイトしたという。玉田監督は「細かい修正は必要だが、今日は一人ひとりが仲間のため、自分のために戦うという課題を実行してくれた。こういう成長を見られるのが一番の楽しみですね」と満足そうにうなずいた。

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