ミラン番記者の現地発・本田圭佑「血迷った上層部、ブザマなチーム、怒るファン……悪夢のシーズンの後のミラン、そして本田の動向は?」

2016年05月04日 マルコ・パソット

過去に例がないほど激しいベルルスコーニへの抗議と退陣要求。

1986年にクラブを買収してから30年。ミランを世界に冠たるクラブに引き上げた功労者は今、最大の癌として忌み嫌われる存在に……。元首相は“民意”を聞き入れるのか? (C) Getty Images

 帝国の終焉――。
 
 こう書くと、何やらスター・ウォーズの新エピソードのようだが、残念ながらそんな楽しい話ではない。ミランの「ベルルスコーニ帝国」の話だ。
 
 この帝国は、シルビオ・ベルルスコーニが株を譲渡するから終わるのではない。誰が新たなオーナーになるか云々という前に、ミラニスタのなかではすでに、ベルルスコーニ帝国は終わってしまっているのだ。
 
 ミラニスタはもうこれ以上、ベルルスコーニにはミランの会長に留まってほしくない。一日も早く、出ていってほしいとすら思っている。
 
 試しに、ウェブで「silviovendi(シルビオ売れ)」、もしくは「silviovattene(シルビオ出て行け)」を検索してみてほしい。きっと、山ほどの結果がヒットするだろう。
 
 また、ベルルスコーニ本人のフェイスブックには、「オーナーを辞任しろ」、「全ての元凶である(副会長のアドリアーノ・)ガッリアーニを連れて出ていけ」というミラニスタのコメントが、この1週間で何万と書き込まれている。
 
 これまでも、ベルルスコーニに対する抗議は見られたが、これほど激しいものは初めてである。
 
 セリエA第32節でユベントスに敗れたことで、ベルルスコーニは溜まりに溜まった不満を爆発させ、監督のシニシャ・ミハイロビッチをクビにしたが、ミラニスタはこの行動が正気の沙汰とは思えなかった。
 
 リーグ終了まであとたったの6試合、最低目標である6位の座もまだ不確定という微妙な時期だったし、試合には確かに負けはしたが、それでも首位のユベントス相手にミランは善戦していた。それなのになぜ、ミハイロビッチを追い出したのか……。
 
 政治家でもあるベルルスコーニは、人々の(つまり有権者の)感情の変化に敏感なはずだ。それだけに、今回のこの"人民の反乱"はかなり痛い出来事のはずである。
 
 ミラニスタの言い分はもっともだ。この日曜の試合では、一体、今シーズンで何度目だろうか、またもセリエBに片足を突っ込んだようなチーム、フロジノーネ――実際にこの節でB降格が決定――に引き分けてしまった。それもサン・シーロで、常に先手を取られてである。
 
【試合レポート】ミラン 3-フロジノーネ
 
 クリスティアン・ブロッキ監督は、3-3の引き分けに持ち込めたことで明るい兆しを感じたというが、もし本当にそう思っているなら、はっきり言ってミラン内部の価値観は狂ってきているとしか言いようがない。
 
 ここ3試合、下から4番目、最下位、ブービーのチームと対戦し、たった2勝点しか挙げられなかったチームに、良い兆候などあるはずがない。
 
 この結果は、やる気と誇り、そして自分のチームに対する愛情を欠いた選手によって、現在のミランが構成されている何よりの証拠だ。
 
 また、この連載で何度も訴えているように、4-3-1-2のシステムも、このチームには合っていない。ただ、オーナーが気に入っているというだけのことである。

次ページ赤字は膨れ上がり、欧州への道も遠ざかり…あまりに悲惨な現実。

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