「ベンチにも良い選手がいるからね」と安堵の表情
試合当日の気温は32度。サポーターもインパクト抜群のオブジェで避暑。写真:浅田真樹
アメリカで開催されているコパ・アメリカ2024。グループBの初戦で顔を合わせたのは、ワールドカップ南米予選で現在4位のベネズエラと、同5位のエクアドルである(第6節終了時)。
先手を取ったのは、エクアドルだった。39分、FKのクリアをジェレミー・サルミエントがダイレクトで蹴り込み、先制に成功した。
しかし、後半に入って攻勢を強めるベネズエラは、65分にサロモン・ロンドンが丁寧に落としたボールをジョンデル・カディスがゴールへ流し込み、まずは同点に。さらに75分、ロンドンのヘディングシュートがGKに弾かれたところを、エドゥアルド・ベロが押し込んで逆転。そのまま2-1で押し切ったベネズエラが、貴重な勝点3を手にした。
結果的には、南米予選の順位で上回るベネズエラが、順当に勝利した格好である。
しかし、目の前で繰り広げられた熱戦は、それほど単純なものではなかった。流れを大きく変えたのは、19分の出来事だ。
ケンドリー・パエスのシュートがGKに防がれたボールを拾おうと、エネル・バレンシアが懸命に伸ばした足の裏が、相手DFの胸のあたりに入ってしまい、レッドカードで退場となってしまったのである。
エクアドルのフェリックス・サンチェス・バス監督が振り返る。
「残念ながら10人で70分間プレーしなければならなくなり、少し引いて構えることになった。スコアの上では何とかリードしたが、それを守ることはできなかった」
そう語る指揮官の名に、聞き覚えがある日本のファンは多いのではないだろうか。
というのも、サンチェス・バスとは、2022年ワールドカップで地元カタールを率いた指揮官であり、2019年アジアカップ決勝では巧みな戦術を駆使し、日本を3-1で下した知将としてよく知られる存在だからだ。
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先手を取ったのは、エクアドルだった。39分、FKのクリアをジェレミー・サルミエントがダイレクトで蹴り込み、先制に成功した。
しかし、後半に入って攻勢を強めるベネズエラは、65分にサロモン・ロンドンが丁寧に落としたボールをジョンデル・カディスがゴールへ流し込み、まずは同点に。さらに75分、ロンドンのヘディングシュートがGKに弾かれたところを、エドゥアルド・ベロが押し込んで逆転。そのまま2-1で押し切ったベネズエラが、貴重な勝点3を手にした。
結果的には、南米予選の順位で上回るベネズエラが、順当に勝利した格好である。
しかし、目の前で繰り広げられた熱戦は、それほど単純なものではなかった。流れを大きく変えたのは、19分の出来事だ。
ケンドリー・パエスのシュートがGKに防がれたボールを拾おうと、エネル・バレンシアが懸命に伸ばした足の裏が、相手DFの胸のあたりに入ってしまい、レッドカードで退場となってしまったのである。
エクアドルのフェリックス・サンチェス・バス監督が振り返る。
「残念ながら10人で70分間プレーしなければならなくなり、少し引いて構えることになった。スコアの上では何とかリードしたが、それを守ることはできなかった」
そう語る指揮官の名に、聞き覚えがある日本のファンは多いのではないだろうか。
というのも、サンチェス・バスとは、2022年ワールドカップで地元カタールを率いた指揮官であり、2019年アジアカップ決勝では巧みな戦術を駆使し、日本を3-1で下した知将としてよく知られる存在だからだ。
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実際、フェリックス・バス監督は、ただ手をこまねいて見ているだけではなかった。
キャプテンを失った後は、すぐに「空中戦を考えて」ケビン・ロドリゲスを投入。と同時に、トップ下のパエスを右サイドへ移すことで、どうにかチャンスメイクの機会をうかがおうとした。
果たして、セットプレーから先制。さすがは戦略家、のはずだった。
しかし、この試合に関して言えば、打つ手で勝っていたのは、ベネズエラのフェルナンド・バティスタ監督のほうである。
このアルゼンチン人指揮官は、「スタートはエクアドルの方が良かった」と認めつつも、勝敗を分けたポイントに「退場の後」を挙げ、こう続けた。
「相手が10人になると、時に試合は複雑になるものだ。ただひとつ私が望んだのは、落ち着いてプレーすることだった」
そして、後半開始とともにカディスとベロを同時投入。そのふたりがともにゴールを決めて試合をひっくり返すのだから、まさに采配的中、である。
加えて、会場のリーバイス・スタジアムは日差しが強く、気温32度に見舞われたことも大きかった。守備に追われるエクアドルの消耗が激しくなるのも、無理はなかった。
「エクアドルが中央を閉め、カウンターを狙ってくるのは分かっていた。サイドからの攻撃が必要だった」
そう振り返ったバティスタ監督は、「我慢して冷静に戦ってくれた」と選手たちを称えるとともに、「後半はとても良かった。我々には11人だけでなく、ベンチにも良い選手がいるからね」と語り、安堵の表情を浮かべた。
一方のフェリックス・バス監督は、前半のロドリゲス投入について「期待したほどの成果はなかった」と自戒。「勝利を収めたのだから、今日対戦した戦略家は私よりも優れていたんだ」と、潔く負けを認めた。
カタールを初のアジア王者へと導いた知将も、この日ばかりは脱帽するしかなかった。
取材・文●浅田真樹(スポーツライター)
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果たして、セットプレーから先制。さすがは戦略家、のはずだった。
しかし、この試合に関して言えば、打つ手で勝っていたのは、ベネズエラのフェルナンド・バティスタ監督のほうである。
このアルゼンチン人指揮官は、「スタートはエクアドルの方が良かった」と認めつつも、勝敗を分けたポイントに「退場の後」を挙げ、こう続けた。
「相手が10人になると、時に試合は複雑になるものだ。ただひとつ私が望んだのは、落ち着いてプレーすることだった」
そして、後半開始とともにカディスとベロを同時投入。そのふたりがともにゴールを決めて試合をひっくり返すのだから、まさに采配的中、である。
加えて、会場のリーバイス・スタジアムは日差しが強く、気温32度に見舞われたことも大きかった。守備に追われるエクアドルの消耗が激しくなるのも、無理はなかった。
「エクアドルが中央を閉め、カウンターを狙ってくるのは分かっていた。サイドからの攻撃が必要だった」
そう振り返ったバティスタ監督は、「我慢して冷静に戦ってくれた」と選手たちを称えるとともに、「後半はとても良かった。我々には11人だけでなく、ベンチにも良い選手がいるからね」と語り、安堵の表情を浮かべた。
一方のフェリックス・バス監督は、前半のロドリゲス投入について「期待したほどの成果はなかった」と自戒。「勝利を収めたのだから、今日対戦した戦略家は私よりも優れていたんだ」と、潔く負けを認めた。
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