【柏】「7戦未勝利」から一転して「5連勝」。劇的な上昇曲線を描く柏に、なにが起きたのか

2016年04月28日 鈴木潤

下平監督が求めるのは、緻密さと大胆さの融合。パスだけに固執しない柔軟性が鍵に。

4節から就任した下平監督(左)。4月6日のナビスコカップで初勝利を挙げると、以降は怒涛の公式戦5連勝とチームを上昇気流に乗せた。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 J1第1ステージ8節の鹿島戦に2−0で勝利し、柏は公式戦5連勝を飾った。FC東京、G大阪、鹿島を相手に挙げたリーグ戦3連勝は、いずれも完封勝利である。
 
 開幕から公式戦7戦未勝利が続き、一時は降格圏にまで順位を落としていた状況からの劇的な上昇曲線。その要因は、4節の新潟戦から新監督に就任した下平隆宏監督の手腕によるところが大きい。
 
 下平監督は、前任のミルトン・メンデス監督の志向していた"アグレッシブな攻撃サッカー"と、昨年まで吉田達磨監督の下で構築した柏の哲学でもある"ポゼッション"の融合を図った。
 
 昨季の柏は"ポゼッション"の意識に捉われるあまり、ボールを失うことを恐れ、それが逆にシュートやクロス、縦パスを入れる局面の少ない消極性を生んでいた。
 
 だが、下平監督は、ボールを大事にすることをベースにしながらも、パスだけに固執せず、相手の背後が空いているならばシンプルに裏へ長いボールを通すことや、ゴール前に人数が揃っているならクロスを上げていく積極性を求めた。
 
 ただ、そういうチャレンジはボールをロストする可能性も高まる。その失ったボールを奪い返すために、守備も決して怠らない。今の柏がボールを失った瞬間に切り替え、前線からハイプレスをかけて奪い返しに行くのは、その意識の表われである。
 
 仮に、そこで奪い切れなかった場合には4−4−2のコンパクトな守備ブロックを作り上げ、連動したプレスをかけていく。ショートパスをつなぐ緻密さに大胆さを加味した攻撃意識、前線からのハイプレスとブロックを形成する守備組織の構築。攻守両面の戦術がチームに浸透し、「やるべきことが明確になった」と栗澤僚一は言う。
 
 好調を支えるもうひとつの要因が、若手選手の台頭だ。
 
 スタメンの平均年齢が23歳という若い選手たちで構成される柏には、中村航輔、山中亮輔、秋野央樹、小林祐介、中川寛斗、中谷進之介、伊東純也といったリオ五輪世代だけでなく、東京五輪世代の中山雄太までもが出場機会を伸ばしている。若い彼らが試合出場を重ねるごとに実力を上げ、自信を深めればチームの勢いはさらに増していくだろう。
 

次ページ鹿島戦でハマったカイオ対策。対戦相手の的確な分析も好調を支えるひとつの要素に。

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