ミラン番記者の現地発・本田圭佑「混乱の極みにあるミランで唯一褒められる本田」

2016年04月28日 マルコ・パソット

頓挫した株式譲渡、誤りだった監督交代、不甲斐ないチーム…。

アウェーでのヴェローナ戦といえば、本田が2ゴールを挙げ、ミラン加入以降で最も評価を高めた昨シーズンの第7節(写真)が思い出される。今回も本田自身は褒められたが、昨シーズンは3-1の快勝、今回は終了間際に悪夢の逆転負け……喜べるはずもない。 (C) Getty Images

 このカオス(混沌)の世界へようこそ!
 
 連載を始めて2年強、すでに何度も「現在のミランは混乱している」と書いてきた。しかし、これほどの混沌はいまだかつて見たことがない……。
 
 今シーズンも、セリエAの3試合とコッパ・イタリア決勝(ユベントス戦)を残すのみとなったが、ミランは今、来シーズンの欧州カップ出場権を失うかもしれないという、深刻な危機に瀕している。
 
 ミランのどこを切っても、今や飛び出してくるのは"混乱"の二文字だ。
 
 まずはチーム運営。「ミスター・ビー」ことビー・テチャウボン氏との無意味な1年半にわたる交渉の後、未だに48パーセントの株譲渡は実現せず、約束された4億8千万ユーロの金も入ってこない。
 
 業を煮やしたオーナーのシルビオ・ベルルスコーニは、「フィニンベストグループ」――テレビ局「メディアセット」や大手出版社「モンダドーリ」などを有するミランのオーナー企業――に、新たに中国系コングロマリットと交渉することにゴーサインを出した。
 
 イタリア系アメリカ人のサル・ガラティオトが仲介を務めているが、中国側が提示する金額はミスター・ビーの時よりもかなり落ちる。彼らは、ミランの全ての資産価値を7億ユーロと見積もっている。
 
 そして、ミスター・ビーとの一番の違いは、先方が直ちにミランの株の過半数以上の所有を希望していることだ。ガラティオト氏によると、これらの交渉は数か月以内に終了するというが、肝心のベルルスコーニの意向がはっきとしていない。
 
 なぜなら、チームの筆頭株主の座を降りるという考えは、これまで彼の頭のなかには少しもなかったし、彼にとってそれは、考えたくもないことだったのだ。
 
 しかし、ベルルスコーニがこの株譲渡を了承するかしないのかがはっきりしなければ、来る夏に、どれだけの資金をカルチョメルカートに投入できるのかも分からない。
 
 次の混乱は、監督問題だ。クリスティアン・ブロッキが突然、トップチームの指揮官に昇格してから、ここまでの3試合の結果は、順番に勝ち、引き分け、負け。そして得点は2、失点も2点である。
 
 彼の監督デビュー戦となったサンプドリア戦での勝利の歓喜は、瞬く間に失望に取って代わられた。
 
 最下位ヴェローナに敗れたショックは大きい。しかもこのチームは、セリエB降格が決定した。まるで冗談のような話だが、すべて悲しい事実である……。
 
 ベルルスコーニが衝動的にシニシャ・ミハイロビッチをクビにしてしまったことが、大きな過ちだったことは明らかだ。ミハイロビッチは選手たちと良好な関係にあったし、彼の用いていた4-4-2は、チームに安定をもたらしていた。
 
 ところが、ブロッキは彼の信念とオーナーの強い要望により、システムを開幕当初の4-3-1-2に戻した。しかし、それが失敗であることはすでに立証済み。もう一度同じ選手たち(冬のメルカートで獲得したのはケビン=プリンス・ボアテングのみ)を使って試してみたところで、結果は同じなのは明白である。
 
 案の定、ミランはまたも困難に直面した。今のミランは、トレクアルティスタ(トップ下)を使ってうまくいくチームではないのだ。先週木曜日のカルピ戦、そして今回のヴェローナ戦で、それははっきりと分かった。

次ページ恥ずべきヴェローナ戦の後、監督が唯一褒めたのが本田だった。

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