【高校サッカー】ある双子の物語――マリノスユース戦で2点を決めた弟に、僕は嬉しくも悔しくもある

2016年04月26日 安藤隆人

成立学園を主将として引っ張る兄と、市立船橋でアタッカーとして活躍する弟。

市立船橋でアタッカーとして活躍する弟の拓(左)と、成立学園を主将として引っ張る兄の開(左)。今季の高校サッカー界でも、西羽兄弟は注目のプレーヤーたちだ。写真:安藤隆人

 開拓。
 
 辞書には、「新しい文野や領域、あるいは人の進路や人生・能力などを切り開くこと」とある。そして、『開』も『拓』もそれぞれの単語で『切り開く』という意味を持つ。それぞれで道を切り開き、時には共に切り開いていってほしい――。そんな思いを込められて、名づけられたふたりは、それぞれのチームでまさに道を切り開こうとしている。
 
――◆――◆――
 
 成立学園高のキャプテンを務めるDF西羽開と、市立船橋高のMF西羽拓は双子の兄弟だ。屈強なフィジカルと駆け引きの上手さを持ち、サイドバックとしてプレーする兄・開と、高いアジリティと打開力、シュートセンスを武器に攻撃にアクセントを加える弟・拓。堅実で熱血的な開に対し、拓は奔放な性格で、双子ながらそれぞれがはっきりと異なる特徴を持っている。
 
「僕らめっちゃ仲悪いですよ(笑)」
 開がこうはっきり言うように、寮生活ではないふたりは、自宅の部屋の二段ベッドで寝ているが、会話を交わすことはほとんどないのだという。
 
 だが、それは決して『仲が悪い』わけではなく、お互いを『強烈なライバル』と認め合っているからこその接し方だということが、話を聞いていくうちに徐々に分かっていった。
 
 4月23日。兄・開は関東大会東京都予選準決勝の関東一高戦を迎え、弟・拓は高円宮杯U-18プレミアリーグEAST・3節の鹿島ユース戦を迎えた。埼玉県にある同じ家を出て、それぞれの試合会場に向かったふたり。筆者は彼らのうちのどちらかの試合を観に行こうと考えていたが、迷った末に兄・開の試合を選んだ。
 
 キャプテンマークを巻き、左サイドバックとして先発した開は、持ち前の対人の強さと駆け引きの上手さをフルに発揮。昨年度インターハイベスト4で、今年も有力校のひとつと目されている関東一高のアタッカー陣の前に立ちはだかった。
 
 前半途中に関東一の両サイドハーフが、開の守備力を警戒し、ポジションを入れ替わるなど、都内のライバル校を相手に本来のサッカーをさせなかった。試合は前半に2ゴールを奪った成立学園が、開を軸にした堅守でリードを守りきり、2-0の勝利。成立学園は見事に関東大会出場権を手にした。
 
 

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