【浦和】首位攻防の舞台裏、阿部勇樹が明かす『中村憲剛-大久保嘉人』ホットラインをどのように寸断させたのか?

2016年04月25日 塚越 始(サッカーダイジェスト)

印象的な試合中の「構え」。多くの時間、半身の姿勢をとり、常に首を左右に振って注意を怠らなかった。

チケットは完売。メインスタンドがリニューアルされた満員の等々力競技場に入場する阿部。緊張感が伝わってくる。写真:サッカーダイジェスト

 川崎-浦和戦のあと、選手が取材に応じるミックスゾーンで、阿部勇樹が中村憲剛と出くわすと、互いに軽く微笑んで健闘をたたえ合った。チームであり、Jリーグを代表するボランチ、そして主将同士。言葉にしなくても分かり合える充実感が漂っていた。
 
「自信にもなるし、やり続けていくべきことも、課題も見えてくる。大きな1勝? うーん、1勝は1勝。ただ、無敗だったチームに勝てたという意味では大きいと思う」
 
 浦和が開幕からリーグ7戦無敗だった川崎に1-0の勝利を収め、首位の座を奪い返した。鋭利なカウンターから危うい場面を作られたものの、結果的に与えた決定機はわずか1回。最後まで集中を切らさず、武藤雄樹が決めた貴重な1点を守り切った。そんな大一番を、阿部はクールに振り返った。
 
 この試合の阿部の走行距離11.514㌔は、柏木陽介の11.790㌔に次いで出場選手中2位。最終ラインをケアしながらビルドアップに加わるという、攻撃と守備をつなぐリンクマンとしてチーム全体を統率し、前線にパワーをもたらした。
 
 印象に残っているのが、試合中の「構え」だ。阿部は多くの時間、半身の姿勢をとり、常に首を左右に振って注意を怠らなかった。

 その視界に常に捉えていたのが、中村憲剛であり大久保嘉人だった。ふたりに仕事をさせないため、川崎自慢のホットラインを寸断しようとする絶妙なポジション取りをしていた。
 
 さらにその間隙を縫って、スピードとキレのある小林悠が飛び込んでくる。中村の周りでは、大島僚太がショートパスを散らしてアクセントをつける。阿部は「ホットライン」を牽制しつつ、それぞれ異なる武器を持つ厄介なタレントたちをケアしなければならなかった。
 
 それでも阿部は相手が強力であることを喜ぶように、持てる力を余さず出しきって立ちはだかった。
 
 19分、敵陣でパスによる崩しを止められると、こぼれ球を拾った中村から素早く大久保と小林の2トップへフィードが放たれる。パスが通れば、致命的なピンチになりかねない。そこで身を挺してボールを弾き返したのが、22番――阿部だった。
 

 

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