【広島】帰ってきた“ドクトル・カズ”。百戦錬磨の男が「良いサッカーではなく、勝つサッカーに徹する」と語った真意とは?

2016年04月16日 小田智史(サッカーダイジェスト)

千葉が思わず『ルンバ』に例える絶妙なボール奪取。復帰戦で存在感を示す。

鋭いボール奪取で何度も相手のカウンターを止めた森﨑和(8番)。同僚の千葉が思わず、その姿をロボット掃除機の『ルンバ』に例えるほどの職人ぶりだった。 (C)J.LEAGUE PHOTOS

 新潟戦の広島は、連戦の疲労もあってパスミスが多く、本来の姿から程遠い状態だった。そんなチームを1-0の勝利に導いたのが、足の故障から復活し、およそ1か月半ぶりにリーグ戦のピッチに立った森﨑和幸である。この日、背番号8が見せた"ファインプレー"は、大きく分けて3つあった。
 
 ひとつ目は32分。茶島雄介のバックパスを受けようとした塩谷司がスリップして入れ替わられ、ゴール前に抜け出したFWにスルーパスを送られたが、絶妙な読みとスライディングで間一髪ピンチをしのいだシーンだ。13分、27分とカウンターから決定機を作られて嫌な流れが漂い始めていただけに、このプレーで前半を無失点で切り抜けたのは、チームに落ち着きを取り戻させた。
 
 続くふたつ目は、後半の「守備の修正」だ。前半はチーム全体が新潟のパスの出どころに対して上手くアプローチに行けず、バイタルエリアへのパスを自由に入れさせてしまった。中盤と最終ラインが間延びし、連動性を欠いた点にいち早く気付いた森﨑和は、ハーフタイムにボランチのコンビを組む青山敏弘へアドバイスを送っていたという。
 
「前半はプレッシャーの掛け方がハマらなかった。カズさんが『横からのボールと後ろからのボール、ボランチに入るタイミングでしっかりプレッシャーをかけるぞ!』と声をかけてくれて、そこから後半は良くなった」(青山)
 
 事実、後半は48分にラファエル・シルバに一度カウンターを許した程度で、シュート3本、枠内はゼロに封じている。これは、ハーフタイムの意思疎通で森﨑和か青山のどちらかがボールホルダーにプレッシャーをかけて"目印"となり、その寄せに連動するように最終ラインが押し上げ、スペースをきっちりと埋めた成果と言っていい。
 
 そして最後は、ミキッチのゴールで先制した直後の62分、突進してくるR・シルバから一撃でボールを奪ったプレーだ。もし、突破を許して同点にされていたら、ゲームはさらに難しいものになっていただろう。森﨑和は激しいタックルに関して「僕としては普通のプレー」と平然と振り返ったが、リベロの千葉和彦はそのボール奪取力をロボット掃除機になぞらえ、「『ルンバ』じゃないかってくらい、ボールを拾ってくれた」と称えた。

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