【リオ五輪代表】落選組の野津田が挑むラストチャンス。「アイツは“持っている”」と手倉森監督が評するレフティの決意とは?

2016年04月13日 小田智史(サッカーダイジェスト)

アピールになった70分の同点弾。“ゴールへの欲”が「自然と」身体を動かした。

「僕はああいうところに飛び出すことはあまりない」。自身でもそう分析する同点ゴールは、結果にこだわる強い気持ちが生んだものだった。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

「結果を残さないと次はない」
 
 野津田岳人は悲壮なほどの覚悟を持って、練習試合の清水戦に臨んでいた。アジア最終予選前に、右膝内側側副靱帯を損傷(全治8週間)し、五輪出場権を懸けた決戦のメンバーから落選。復活後も広島でポジションを奪えず、3月のポルトガル遠征にも招集されなかった。

 悲願である国際大会出場へのアピールの場を求め、4月に新潟へ期限付き移籍。試合に出場できない悔しさ、生まれ育った広島という地やクラブを離れる辛さ、環境を変える不安……。それらすべてと向き合うことになっても、五輪の夢だけは譲れない――。ある意味ですべてを"捨てて"下した決断だけに、今回の静岡合宿は野津田にとっては"ラストチャンス"だったのだ。
 
 後半頭から右サイドハーフに入ると、精力的にフリーランニングし、積極的にゴールに向かっていく。

 迎えた70分、左サイドの約30メートルの位置でFKを得ると、清水のゴール前にスペースを見つけた野津田は、すかさずペナルティエリアに侵入。キッカーの鎌田からスルーパスを受け、飛び出してくるGKの動きを冷静に見極めて、ゴール右隅にシュートを突き刺した。
 
「(後半に入って)相手の足が止まってきた部分があったので、隙があるかなと。スペースがあったところに走り込んだら、(鎌田)大地が良いボールをくれた。大地がフリーだったし、アイツはしつかり見てくれている。あとは落ち着いて流し込むだけだった」
 
 逆に受け手の野津田に対し、鎌田も「あれは僕というか、岳人くんが切り替えて良い動き出しをしてくれたから」と話す。
 
 野津田と言えば、左足の強烈なキックが武器だ。本来ならば、鎌田に代わってキッカーの位置に立っていても不思議はないが、"ゴールへの欲"が身体を動かしたという。
 
「確かに、僕はああいうところに飛び出すことはあまりない。でも、今日は特にゴールが欲しかったし、だから自然とああいう動きができたと思う。もっとシュートを狙っていきたかったけど、まずはゴールに向かって積極的にプレーできたのが良かった」

 野津田は昨年10月の佐賀合宿でも、鳥栖との練習試合でスーパーゴールを決めている。その直後、手倉森監督は「岳人は(アピールの)大事なところでゴールを決める。アイツは"持っている"」と話していたが、再び与えられたチャンスで結果を残し、試合後にはまた指揮官から"持っている"との言葉を受けた。

次ページまだ見ぬ「世界」に挑戦するために――。「なんとしても(五輪のメンバーに)選ばれて活躍したい」。

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