「バイエルンはトミヤスを獲得していればと...」現地識者が評価した冨安健洋の“ザネ封じ”

2024年04月20日 中野吉之伴

バイエルンに2戦合計2-3で敗れる

再三ザネとマッチアップした冨安(右)。(C)Getty Images

 日本代表DF冨安健洋が所属するアーセナルは、チャンピオンズリーグ(CL)の準々決勝でバイエルンに2戦合計2-3で敗れた。

 ヨズア・キミッヒの決勝ゴールでホームでのセカンドレグをモノにしたバイエルンのファンは試合後、最寄りの駅に向かう道で「帰りはアーセナルファンが静かでよかったぜ」と口々に話していた。たしかにすでにアウェーサポーターの姿はない。

 アーセナルファンの試合前の熱気には相当なものがあった。街中でも、電車の中でも、高らかに歌うファンが多くみられた。スタジアムでもアウェー席からチームの勝利を願い続けていた。

 ホームで行われたファーストレグで、アーセナルはバイエルンの右サイドに入ったドイツ代表FWレロイ・ザネを抑えきれずに苦しんだ。

 ザネは恥骨結合炎に苦しみ、ここ最近はほぼトレーニングもできていない状態だったが、左SBスタメンで起用されたヤクブ・キビオルがたびたび突破を許し、2失点ともそのサイドから献上してしまった。
 
 ここを修正しなければ、セカンドレグでも同じようなことが起こってしまう。アーセナルのミケル・アルテタ監督が送った刺客が冨安だった。対人戦での対処、ボールロストを察知した帰陣の速さにはさすがなものがある。空中戦での競り合いでも安定感を見せる。

 16分に相手左サイドからのワイドなサイドチェンジへの対応が少しずれ、ザネに突破を許しかけたが、味方のブロックに救われる。その後は、ザネヘのパスを許さないポジショニングで攻撃の糸口を与えず、背後からの巧みなチェックでボールを奪取するシーンも目立った。

 ハーフスペースに顔を出し、相手守備を自分に引き寄せて周囲の選手をフリーにさせるシーンも何度かあった。逆にそこからのポジションチェンジでスルスルと前線に顔を出し、パスを受けてクロスに持ち込む場面も。

 アルテタ監督が試合後「まるでチェスマッチのような試合だった。お互いが相手のミスを待っているような前半だった。チームには大事なポジションで確かな秩序が必要だった」と振り返っている。冨安の起用はまさにそのための大事な一手だった。
 

次ページ冨安のパフォーマンスは上々だった

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事