【リーガ現地コラム】クラシコ勝利の原動力となった「新たなマケレレ」。いまやジダン・マドリーに不可欠な戦力だ

2016年04月06日 豊福晋

懐疑的だった周囲の目は確実に変わりつつある。

中盤のフィルター役として真価を発揮し始めたカゼミーロ(右端)。地味な印象は否めないが、6連勝の立役者となるなど貢献度は絶大だ。(C)Getty Images

 ジネディーヌ・ジダンが監督に就任して以降、レアル・マドリーはある選手がピッチに立った試合で負けていない。

 その選手とは、ビッグネームが並ぶBBC(ガレス・ベイル、カリム・ベンゼマ、クリスチアーノ・ロナウド)のいずれかでも、中盤のテクニシャンでもない。おそらくはチームで最も地味な存在であるカゼミーロだ。

 カゼミーロはジダン体制下で公式戦8試合に出場(先発6試合)。そしてその全試合でチームは勝利を収めている。戦前は劣勢が予想された今回のクラシコ(リーガ・エスパニョーラ31節)でも、カゼミーロの法則は破られなかった。もはや偶然ではないだろう。

 試合翌日の『マルカ』紙の表紙はカゼミーロ。華やかさに欠ける彼が新聞の一面を飾ることなど、これまでほとんどなかったはずだ。以前は懐疑的だった彼に対する周囲の目は、確実に変わりつつある。

 クラシコでカゼミーロは、90分間に渡ってバルセロナのトリデンテと対峙し続けた。リオネル・メッシを自陣ペナルティーエリア付近から遠ざけるタスクを全う。中盤の危険なエリアでほとんどボールを自由に触らせなかった。軽快に突破を仕掛けてくるネイマールに対しては重戦車のように身体を寄せ、裏に抜けようと試みるルイス・スアレスはペペ、セルヒオ・ラモスとの巧みな連携で抑えてみせた。

 同点弾はベンゼマで、決勝点はC・ロナウド。スコアボードに名を連ねたのは華のある選手だが、いまでは彼らと同じくらいの信頼を、指揮官はカゼミーロに寄せている。

 就任当初、ジダンはルカ・モドリッチ、トニ・クロース、そしてイスコ(あるいはハメス・ロドリゲス)の攻撃的な3人で中盤を編成したが、途中からカゼミーロをアンカーに置く形にシフトした。転機となったのはレバンテ戦(リーガ27節)だ。この一戦で先発を果たした彼は好プレーを披露。以降も出番を確保し、チームの公式戦6連勝に貢献した。

 持ち味は重心の低さと球際の強さ。忘れられがちだが足元の技術も高い。ボールコントロールも冷静で、しっかりと前を向いて繋げることができる。

次ページカゼミーロを使い続けるという判断が最高の形で実を結ぶ。

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