プロ1年目のオランダで躍動する19歳・長田澪が強豪フェイエノールトを完封! U-20ドイツ代表でも主軸を張る守護神の言葉にみる“日本と欧州の違い”【現地発】

2024年04月05日 中田徹

20試合ぶりのクリーンシートを達成

最下位フォレンダムで奮闘を続ける長田。ドイツ名はミオ・バックハウスだ。(C)Getty Images

 4月4日、フォレンダムがフェイエノールトに撃たれたシュートは23本。長田澪(ドイツ名はミオ・バックハウス)は11回のセーブで格上を完封し、最下位に沈むチームに1部残留の望みをつなぐ勝点1(0-0)に貢献した。20試合ぶりのクリーンシートに、長田は「マジで無失点は超嬉しいですね」と声を弾ませた。

 当然、マン・オブ・ザ・マッチは長田。試合後、ファンから祝福の嵐を浴びた19歳の守護神は「ファンの前で嬉しかったです。ファンに喜んでもらえるためにサッカー選手になったようなもの」と喜んだ。

 19分、フェイエノールトのエースストライカー、サンティアゴ・ヒメネスの強烈なシュートを左手首の辺りで止めたあと、長田は座り込んでしまい、ベンチに交代を要求する合図を送った。

「実はあれは『テーピングを替えてほしい』というゼスチャーだったんです。5週間くらい前から左ヒジが痛くて、ヒメネスのシュートを止めた箇所が、ヒジが後ろに伸びるポイントだったんです。フィジオ(犬塚健太氏)から『お前、惑わすな』って言われてしまいました(笑)」

 これから15位・RKC(4月7日)、16位・エクセルシオール(同12日)との直接対決がフォレンダムを待ち受ける。

「これが最後のチャンス。勝たないと、本当に俺たちは終わってしまう。それでも、俺らに失うものはない。今はすごく良い雰囲気で練習も試合もできていると思います。だけど2試合連続で引き分けたけれど、チームは今年まだ勝ってないんですよ。サッカーのやり方が変わっただけで、結果は変わってなく、チームの置かれた状況も変わっていない。

 今日は満足ですが、日曜日の試合に向けて気持ちを切り替えないとね。だけど、中2日だからそれ(切り替え)が一番難しい。疲れでキレのない選手もいる。自分もちょっと疲れがあるので、今日からリカバリーをはじめて、日曜日に向けて頭の中を切り替えます。これから勝ち続けて残留を決めます」
 
 3月22日と25日、U-20ドイツ代表はフランスと練習試合を行なった。データサイトを見ると、長田は1戦目(3-1)で後半から出場し、2戦目(4-4)はフル出場した。

「いえ、2試合目は前半だけでした。そうすると僕ともうひとりのキーパーはU-20ドイツ代表として2試合キャップが付くわけです。そのことは僕たちにとってプラスになります」

 ハンネス・ヴォルフ監督は勝つための采配ではなく、若いGKふたりのキャリアにつながる策を取ったわけだ。

 U-15世代からドイツ代表でプレーする長田のスタッツを眺めていると、一度の例外を除き、招集されたら最低でも1試合はプレーしている。「代表チームに呼んだからには、試合に出して国際舞台を経験させる」というドイツサッカー協会の強い意思が、このスタッツから透けて見える。

 1試合もプレーできずにベンチに留まったのは22年9月、U-19ユーロ予選の3連戦だった。

「その前の練習試合で絶不調でミスをして、突然『お前は出さない』って言われました。試合に出られなかった時はもちろんヘコみました。それでも、試合に出るキーパーを助けるのはもちろんのこと、俺はやるべきことをしなければいけない。みんなのモチベーションを上げたり、夜は『みんなでゲームをしようぜ!』と盛り上げたりね。それ以外は毎回、必ず1試合はプレーしています」

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